要介護認定を受けていると障害者控除を利用できるって本当?

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「障害者手帳を持っていなくても障害者控除が受けられるらしい」

「要介護認定を受けていると、所得税を軽減できる場合がある」

年末調整や確定申告について調べていて、こんな話を聞いたことはありませんか?

障害のある方やその家族は、障害者控除の対象となります。所得税や住民税、健康保険といった税金や保険料が安くなるため、ぜひチェックして利用したい制度です。

そこでこの記事では、障害者控除の基本的な知識を解説した上で、介護を受けている方が受けられるケースについて紹介します。

所得税の負担額を左右する障害者控除

障害者控除とは、年末調整や確定申告で障害者やその家族の所得税の負担額が軽減されるしくみです。

所得税は、1年間の収入から必要経費を差し引いた金額に所定の税率を掛けて計算します。

障害者控除は所得控除の一種です。所得税を計算するとき、課税対象額である所得から障害者控除の金額を差し引くことができるのです。

障害者控除でいくら差し引くことができる?

障害者控除には、障害の度合いなどによって次の3つの区分があります。

● 障害者
● 特別障害者
● 同居特別障害者

一つずつ具体的に見ていきましょう。

1.障害者

身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳、療育手帳などの交付を受けている人のうち、所定の等級に当てはまる方。

所得税は27万円、住民税は26万円の控除が受けられます。

2.特別障害者

「障害者」よりも障害の等級が重度の方。

所得税は40万円、住民税は30万円の所得控除ができます。

3.同居特別障害者

同一生計の配偶者または扶養親族が「特別障害者」に該当する方と同居している場合に適用されます。

例)同居している特別障害者の妻と同一生計を営んでいる

所得税は75万円、住民税は53万円を所得控除できます。

障害者や特別障害者として所得控除の対象条件や、同居特別障害者の詳細については、国税庁の公式ホームページに詳しい解説があります。ぜひチェックしてみましょう。

参考:No.1160 障害者控除|国税庁

障害者手帳の交付を受けていなくても障害者控除となるケースとは

障害者控除は、身体障害者手帳などが交付されていない方でも適用される場合があります。

主なケースは次の2つです。

●障害者手帳を申請中の方
●市町村から障害者認定を受けている方

詳しくそれぞれのケースを解説していきます。

1.障害者手帳を申請中の方

障害者手帳を申請中でまだ交付を受けていない方は、医師の診断書があれば障害者控除の対象となります。

ただし、国税庁の公式ホームページにある障害の等級の条件に当てはまっている必要があります。

参考:No.1186 身体障害者手帳等の交付を申請中である場合の障害者控除の適用について|国税庁

2.市町村から障害者認定を受けている方

高齢者で要介護認定を受けているものの、障害者手帳は持っていない方も、障害者控除を受けられる場合があります。

ただし、次の2つの条件をいずれも満たしていなければなりません。

● 65歳以上であること
● 要支援または要介護認定を受けていること

上記の両方に当てはまる方は、市町村の障害福祉の窓口で申請すると障害者控除の対象になります。

参考:No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について|国税庁

なお、所得税の確定申告や住民税の申告書で障害者控除の申請をするときは、市町村が交付する「障害者控除対象者認定書」が必要です。

障害者控除対象者認定書の注意点

「障害者控除対象者認定書」には次の3つの注意点があります。

●障害者のためのサービスは利用できない
●認定されない場合もある
●毎年申請しなければならない

1.障害者のためのサービスは利用できない

この「障害者控除対象者認定書」は、所得税や住民税の障害者控除の手続きのみに利用できる書類です。交付を受けたからといって、障害者のためのサービスは受けられません。

2.認定されない場合もある

申請しても市町村の判断によって認定されない場合もあります。

3.毎年申請しなければならない

「障害者控除対象者認定書」は、毎年申請をして交付を受ける必要があります(例1)。
ただし、一部の自治体では、障害に大きな変化がない限り、一度交付を受ければずっと使用できるところもある(例2)ので、お住まいの市役所に確認してください。

例1:障害者控除対象者認定書を交付します|船橋市

   「障害者控除対象者認定書」の発行について|紀美野町

例2:所得税・住民税の障害者控除対象者の認定について|浜田市

障害者控除を受けるにはどんな手続きが必要?

障害者控除を受けたい方は、毎年自分で手続きをしなければなりません。「私は障害者手帳を持っている」「65歳以上で要介護者だから」といった方も、自動的に控除は受けられませんので要注意です。

所得税や住民税の所得控除の手続き方法

障害者控除の対象となる主な税金は、所得税と住民税です。

会社員や公務員など給与所得者の方と、個人事業主や年金受給者の方とで手続き方法が異なります。

1.給与所得者(会社員など)のケース

年末調整の時期に会社から渡される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に障害者に関する情報を記入するだけです。

ちなみに、年末調整とは別に、次の2.のように確定申告で申請することもできます。

2.個人事業主・年金受給者のケース

毎年2月から3月の確定申告で手続きをします。確定申告書に障害者控除の情報を記入する欄がありますので、障害者本人の氏名や控除額などを記入しましょう。

なお、年末調整、確定申告書いずれの場合も、申請時に障害者手帳などの証明書類のコピーの添付は必要ありません。また、障害者控除に該当する方で、これまで控除の申請をしていなかった場合でも、過去5年間は遡って申告可能です。安心して下さい。

参考:【確定申告・還付申告】|国税庁

まとめ

障害者控除は、障害者やその家族の税金を軽減する国の制度です。障害者手帳を持っていない方でも、要介護認定を受けていれば市町村に申請して所得控除を受けられる場合があります。

ただし、障害者控除は年末調整や確定申告で自身が申請しない限り、適用されません。

障害者控除や障害者控除対象者認定書についてわからないときは、お住まいの市町村や管轄の税務署に相談してみましょう。

【参考サイトまとめ】

No.1160 障害者控除|国税庁

No.1185 市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について|国税庁

【確定申告・還付申告】|国税庁

老齢者の所得税、地方税上の障害者控除の取扱い|厚生労働省

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