介護保険施設における負担限度額が見直されることになりました。今回の改正では、食費の金額が底上げされることにより、人によっては月2万円以上負担が増えることになります。月2万円以上の費用負担が上がるので、ご家族が負担している場合などはかなり負担が増えてしまいますね。また、同時に高額介護サービス費の負担限度額が見直されます。どのように変更になったのか詳しく解説していきたいと思います。
目次
介護保険施設における負担限度額とはどんなサービス?
介護保険施設の入所サービスや、ショートステイを利用する時に、低所得の方への助成(補足給付)が行われ、食費や居住費の負担を軽くするという制度です。対象は非課税世帯の方となります。

介護保険施設とは
● 特別養護老人ホーム
● 介護老人保健施設
● 介護療養型医療施設
● 介護医療院
上記4施設のことを指し、介護保険施設と総称されます。
どれくらいの補足給付が適応されるのか
食費や居住費が半分以下になることがあります。食費に関しては約700円程度の補足給付が行われ、月2万円以上安くなります。
負担限度額認定を受けるには
介護保険施設サービスを受ける方が住んでいる管轄の役所にて申請を行う必要があります。申請書は窓口でもありますが、事前にホームページなどからダウンロードして、必要項目を記入しておくとスムーズです。
持参物
持参物として介護保険施設を利用する方とその世帯の貯金通帳が必要になります。預貯金額により、限度額の区分が変わりますので、確認されることになります。コピーでも問題ない所が多いので、直接持っていきたくない方は、事前に役所に確認をとると良いです。市町村区によって若干の違いはありますが、印鑑や同意書も必要になりますので、合わせて確認しておきましょう。
通帳の提出について
自分たちは年金しかもらっていないからとよく言われるのですが、ほとんどの高齢者は年金のみの収入です。他に収入があったり、通帳を分けたりしている方もおられますが、基本的には全ての資産を証明することが決まっています。虚偽の報告などあれば、平等性や信頼性が失われるので、正確に申請しましょう。
介護保険施設負担限度額の変更点
今までは4段階の区分がありました。
● 4段階は課税世帯
● 3段階は非課税世帯
● 2段階は非課税世帯で年収80万円以下
● 1段階は生活保護受給者
と分けられていますが、今回の変更によって5段階に分けられます。

3段階区分の方が2分化される
「3段階の②」と「3段階の①」に分割されることになりました。②の場合は4段階の人とほぼほぼ変わらない負担になりますので、この区分になる方は要注意です。①の場合は元々の3段階と変わらないので、大きく費用負担が増えることはなく安心です。
令和3年8月より預貯金額についての変更
令和3年7月までは
● 単身で預貯金額1,000万円
● 夫婦の合計預貯金額2,000万円
と決まっていましたが、令和3年8月からは
● 単身500万円・夫婦の合計1,500万円 ⇒ 3段階②
● 単身550万円・夫婦の合計1,550万円 ⇒ 3段階①
● 単身650万円・夫婦の合計1,650万円 ⇒ 2段階

細かく分けられました。今まで、負担限度額認定を受けていた方でも、預貯金額のボーダーラインが下がってしまったので貯えのある方は対象外になってしまうこともあります。
対象外になった時は
ハッキリ言うと諦めるしかありません。一旦、4段階の区分で支払いをすることになります。しかし、預貯金を切り崩し、前述したボーダーラインを切った段階で再申請をすると、新たに認定を受けることは可能です。
介護保険施設負担限度額の段階別補足給付額の変更
今回の改訂では、食費の補足給付に変更がありました。ちなみに、令和3年8月から食費も53円上がりました。今後は、食費の最低費用は1,392円から1,445円と53円の値上がりです。負担限度額認定を受けると、食費や居住費が下がります。
令和3年7月までの負担限度額
負担限度段階 | 食費 | 多床室(特養等) | 多床室(老健等) | 従来型個室(特養等) | 従来型個室(老健等) | ユニット型個室的多床室 | ユニット型個室 |
第4段階 | 1,392 | 855 | 377 | 1,171 | 1,668 | 1,668 | 2,006 |
第3段階 | 650 | 370 | 370 | 820 | 1,310 | 1,310 | 1,310 |
第2段階 | 390 | 370 | 370 | 420 | 490 | 490 | 820 |
第1段階【生活保護】 | 300 | 0 | 0 | 320 | 490 | 490 | 820 |
令和3年8月からの負担限度額
負担限度段階 | 食費 | 多床室(特養等) | 多床室(老健等) | 従来型個室(特養等) | 従来型個室(老健等) | ユニット型個室的多床室 | ユニット型個室 |
第4段階 | 1,445 | 855 | 377 | 1,171 | 1,668 | 1,668 | 2,006 |
第3段階② | 1,360(1,300) | 370 | 370 | 820 | 1,310 | 1,310 | 1,310 |
第3段階① | 650(1,000) | 370 | 370 | 820 | 1,310 | 1,310 | 1,310 |
第2段階 | 390(600) | 370 | 370 | 420 | 490 | 490 | 820 |
第1段階【生活保護】 | 300 | 0 | 0 | 320 | 490 | 490 | 820 |
※()内は、ショートステイ利用時の金額です。
令和3年8月から、入所サービスとショートステイのサービスで食費の負担額が変わることになりました。今までは一緒の金額だったのでわかりやすかったのですが、低所得者になるにつれ、ショートステイ時の食費が上がることになっています。
負担限度額認定の改訂による影響
介護保険負担限度額の変更によって、多くの方の費用負担が増えます。これにより、ご家族の生活にも変化が生まれるかもしれません。できるだけ早めに負担限度額の区分を確認し、どれくらいの費用が必要になるのかを確認しておくことをお勧めします。食費が53円上がることになりましたが、提供するものは基本的に変わらないところが多いはずです。この点においては、ご理解をいただく必要があります。
今後の動向予測
現在の日本において高齢者の数が多く、介護や医療に多くの税金が使用されています。その為、国全体で財政難になってしまっています。今回の改定はわかりやすく利用者負担を上げて、国の負担を減らす目的があったのだろうと考えられます。現在では、ケアマネジャーが立てるケアプランの自己負担も話題になってきていますので、今後はますます自己負担は増えてくるのではないかと思われます。
介護保険施設における負担限度額が変わることのまとめ
負担限度額の基準がここまで、細かくなってしまうと第三者ではなかなか予測もできない状況となりましたので、介護保険施設を受ける際はしっかり確認しておきましょう。新しい負担限度額認定証には食費の欄が2列になっており、「入所」「短期」のように記載されていますので、しっかりと確認してくださいね。