
「認知症」と「物忘れ」の違いは周囲からすると一見小さなものですが、実際には大きな差があります。
ただ、認知症と物忘れの初期症状はよく似ていて、区別がつきづらいケースが多いです。
そこでこの記事では、認知症と物忘れの基本的な違いや日常生活での認知機能を高めるコツを紹介します。認知症についての理解を深め、具体的な予防法や早期発見のポイントにも触れていますので、健やかな日々を送るためのヒントを見ていきましょう。
認知症と物忘れの基本的な違い

認知症と物忘れは一般にしばしば混同されがちです。
しかし、根本的に大きな違いがあり、予防や介護ではそれぞれの特徴を把握しておく必要があります。
認知症とは、脳の病気や損傷によって引き起こされる記憶や思考の障害です。症状が進行すると日常生活に深刻な影響を及ぼします。例えば、70代のAさんは自宅の住所や家族の名前を忘れるようになったり、時々迷子になったり、過去の出来事と現在を混同したりなど、日常生活に支障が出る病気です。

一方、物忘れは誰にでも起こりうる一時的な記憶の欠落を指します。高齢者だけでなく子どもや若者でも起こりえます。例として、40代のBさんが忙しい一日の終わりに鍵をどこに置いたかを忘れたり、新しい同僚の名前を一時的に思い出せなかったりするケースです。通常は日常生活に大きな支障をきたすことはありません。また、認知機能の低下を示すものではないため、物忘れは一時的に終わります。
認知症の主な症状には、記憶障害だけでなく判断力の低下、言語能力の低下、行動の変化などがあります。
これに対し、物忘れは一般的に短期的で、ある事柄を一時的に思い出せない状態を指します。物忘れは年齢とともに増える傾向がありますが、日常生活の機能を維持できる範囲内で起こります。
両者の違いを理解することは認知症の早期発見と適切なケア、また、物忘れを認知症の兆しだと不必要に心配することを避けるためにも重要です。
認知症の種類と進行過程

認知症の代表的な種類と進行のしかたは下記の通りです。
・アルツハイマー型認知症
認知症のタイプのうち最も一般的なタイプ。記憶喪失、言語障害、判断力の低下が特徴です。
・血管性認知症
脳出血や脳梗塞など脳血管障害などによって起こり、思考や記憶の急激な低下が見られます。
・レビー小体型認知症
幻視や認知の変動が特徴的。筋肉の硬直や震え、猫背や歩行時のバランスが悪化するなど、パーキンソン病に似た身体的症状も現れます。
・前頭側頭型認知症
社交性が乏しくなる、感情の起伏が激しくなり暴言や暴行をするようになるといった性格や行動の変化が目立ちます。また、言語能力の低下も起こり、コミュニケーションが取りづらくなる場合も多いです。

認知症の進行は一般的に軽度の記憶障害から始まり、徐々に日常生活に影響を及ぼすレベルにまで悪化します。症状が進行すると自己管理能力の低下や状況認識の混乱、身体機能の衰えなどが現れるため、最終的には24時間体制で介護が必要になる場合が大半です。したがって、認知症の症状が悪化するにつれて、患者本人だけでなく家族や介護者にも病気の影響が及びます。
物忘れと認知症を見分けるポイント

物忘れは下記の原因で生じます。
・ストレスや疲労
・睡眠不足
・栄養不足や不健康な生活習慣
・加齢による一時的な記憶力の低下
このように、脳にダメージが広がり、日常生活に大きな支障をきたす認知症とは原因に大きな違いがあるのです。
特に、物忘れは一時的で、日常生活に大きな影響を及ぼさないことが多いため、認知症かどうかを見分けるポイントになります。もし物忘れの症状が続いていて、仕事や家事にも差し支えるようであれば、認知症の可能性を疑う必要があるでしょう。
認知症の予防としては、健康的な食生活、定期的な運動、十分な睡眠をとる生活習慣が重要です。また、友人知人や介護サービスなどを活用し社会的なつながりを保つ、読書、パズル、簡単なドリル学習など脳を刺激する活動に取り組むことも効果的と言われています。そして、定期的に健康診断を受け医師による健康管理を受けると共に、認知機能の変化に注意を払いましょう。
認知機能を高める生活のコツ
前章で挙げた認知症の予防法3つを具体例を交えて詳しく紹介します。

1.健康的な食生活
栄養バランスが取れた食事は、脳の健康を保つ基本です。
例えば、脳機能の発達を促進するオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)が豊富な魚(1)や、ビタミンやミネラルが豊富な野菜や果物、玄米や雑穀などが推奨されます。
2.運動と脳トレーニング
定期的な運動は脳の血流を改善し、記憶力や認知機能を高めるのに役立ちます。軽いジョギングやウォーキングが効果的です。一例として、ウォーキングについて以前は「1日1万歩」と言われていました。しかし、最近の研究で1日4,000歩程度でも健康効果があるとされています(2)。

また、頭に刺激を与えて認知機能の維持・改善に役立つ脳トレーニングには、パズルやクロスワード、言語学習など脳を活性化させる活動が有効です。
3.社会的交流の促進
人と触れ合う社会的なつながりはメンタルヘルスの維持に役立ち、認知機能の低下を防ぐのに重要です(3)。友人や家族との定期的な交流、趣味のサークルや地域の活動への参加をおすすめします。

一例として、高齢者の場合、介護保険サービスのデイサービスやデイケアなどの利用が精神的な健康維持に期待できます。
参照(1):妊娠中のお母さんの魚摂取と生まれた子の発達の関係|富山大学 医学部
参照(2):1日1万歩は必要ない? 最新研究でわかった死亡リスク減らすウォーキングの歩数:朝日新聞GLOBE+
参照(3):第4章 認知症の予防 6. 社会的交流・知的活動の視点から _ 公益財団法人 長寿科学振興財団
まとめ

物忘れと混同されやすい認知症ですが、正しく理解することで必要な対応と予防に取り組めます。特に、日常生活でのバランスの取れた食生活、定期的な運動、社会的な交流は認知機能を維持するために効果的です。
生活習慣の見直しを通して認知症のリスクを減らし、より健康な生活を目指しましょう。
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