
高齢者の口内炎は疲れや栄養不足といった一般的なものではなく、義歯や全身疾患が原因で生じる場合もあります。治りの悪いものや原因不明なものはそのままにせず、早めに歯科医を受診することが重要です。
そこでこの記事では、高齢者の口内炎について知っておきたい基本知識や介護予防にも役立つ口腔ケア方法を紹介します。
目次
高齢者と口内炎

歯や口の中の働きが低下する高齢者は、口内炎がよくできる方が多いです。
特に、高齢者の口内炎は一般的な成人に比べて治りが遅い、再発しやすい、複数の症状が同時に現れるといった特徴があります。理由として、加齢による唾液分泌量の減少や口腔粘膜の脆弱化、免疫機能の低下などが考えられます。
具体的に、高齢者に多い口内炎の種類は下記の通りです。
● 義歯性口内炎
義歯による圧迫や摩擦が原因で起こる口内炎です。義歯使用者に多く見られ、義歯の内面に白いプラーク(歯垢)が付着していることが原因となります。
● アフタ性口内炎
原因は不明ですが、ストレスや疲労、睡眠不足、食事中に口内を噛んでしまったなどがきっかけになることが考えられています。円形または楕円形の潰瘍が特徴で、1~2週間で自然治癒することが多いです。
● 口腔癌
口腔粘膜にできる悪性腫瘍です。進行すると痛みや出血、しこりなどが現れます。早期発見・早期治療が重要です。
● 白板症
口腔粘膜が白く厚くなる病気です。数パーセントが癌化する可能性があり、定期的な経過観察が必要です。
● 扁平苔癬(へんぺいたいせん)
口腔粘膜にレース状や網状の白い模様、発赤などが現れる病気です。原因は不明ですが、ストレスや免疫機能の低下などが関係していると考えられています。
● 帯状疱疹
体内で眠っていた水ぼうそうと同じウイルスが再活性化して発症する感染症の一種です。口腔粘膜に水疱が現れます。
● 天疱瘡(てんぼうそう)
皮膚や粘膜に突然水疱が現れる自己免疫疾患です。重症化すると食事が困難になるため、入院が必要となる場合があります。
上記で挙げた口内炎は見た目や症状が似ているものもあり、病気を特定するには歯科や口腔外科での診察が必要です。治りが悪い、痛みや出血が強い、原因不明な場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
受診が必要な症状の見分け方

高齢者の場合、重篤な病気や持病の合併症によって口内炎が現れる場合があります。
そのため、下記で受診が必要な口内炎の見分け方を紹介します。
1.治りが悪い口内炎
口内炎は、通常1~2週間で自然治癒するケースが大半です。しかし、次のような症状が続く口内炎の場合、注意してください。
・ 2週間以上経過しても治らない
・ 何度も同じ場所にできる
・ 大きさが大きい、または広範囲に広がる
・ 深い潰瘍がある
このような症状がある場合は、早めに歯科医を受診しましょう。
2.痛みや出血がひどい口内炎
口内炎になると、患部に多少の痛みや刺激を感じることはありますが、大半が我慢できる程度のものです。ただし、下記のような症状で痛みや出血が悪化する際は、通常の口内炎ではない可能性があります。
・ 食事や会話が困難になるほどの痛みがある
・ 口内炎から出血している
・ 触ると痛みがある
このような症状が続く場合、すぐに歯科医を受診しましょう。
3.口内炎以外にも症状がある場合
口内炎以外にも、次のような症状がある場合は、ベーチェット病や天疱瘡など全身疾患が原因である恐れがあります。
・ 発熱
・ 倦怠感
・ 体重減少
・ リンパ節の腫れ
このような症状がある場合も、早めにかかりつけの歯科や内科を受診してください。
参照:病院で治療したほうがよい口内炎の特徴とは?~間違えやすい病気や治療法を解説~ _ メディカルノート
参照:第12回:いわゆる「口内炎」について _ 都道府県支部 _ 全国健康保険協会
高齢者の口腔ケアの方法

口内炎の予防には歯磨き・うがいや義歯の管理など、日頃の口腔ケアが重要です。
下記で、高齢者におすすめの口腔ケア方法を紹介します。
1. 歯磨き
毎食後、歯ブラシを使って歯磨きを行いましょう。歯ブラシは毛が柔らかいものを選び、歯茎を傷つけないように小さな力で優しく磨きます。
2. うがい
食事後や歯磨き後は水やマウスウォッシュでうがいを行い、口の中の汚れや細菌を洗い流しましょう。口内炎の原因となる細菌対策に効果的です。
3. 義歯の清掃
入れ歯やブリッジなど義歯を使用している場合は、義歯専用のブラシや洗浄剤で義歯を毎日清掃しましょう。義歯の裏側や義歯と歯茎の間もしっかりと清掃し、口内炎の原因となるプラーク(歯垢)を除去することが大切です。
4. 口腔乾燥対策
加齢や薬の副作用によって唾液の分泌量が減少すると、口の中が乾燥しやすくなりドライマウス(口腔乾燥症)の原因になります。口内炎にも繋がるドライマウスの予防法は下記の通りです。
・ 水分補給をこまめに行う
・ 加湿器を使用する
・ 口腔ジェル・口腔保湿剤を使用する
・ ガムを噛む
乾燥した口腔粘膜は傷つきやすく感染症になりやすいため、口内の湿度を維持する口腔乾燥対策が必要です。
参照:口内炎と口腔ケア|今日から始める口腔ケア|日本訪問歯科協会
まとめ

高齢者の口内炎は、義歯や全身疾患が原因であることが多く、特に治りが遅く再発しやすいことが特徴です。したがって、痛みが激しい、治りが悪い、症状が重い場合には速やかに歯科医や内科医の診断を受けましょう。また、歯磨き、うがい、義歯の清掃、口腔乾燥対策といった日常的な口腔ケアが予防に効果的です。高齢者の口腔ケア習慣をサポートし、口内炎予防に繋げましょう。