高齢者の趣味活動|老人ホームでのアート・音楽プログラムの効果

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高齢者や介護施設の利用者を対象に、健康維持やQOL(生活の質)向上に繋がるアートや音楽を取り入れたプログラムが注目されています。実際に、老人ホームやデイサービスでは、様々なアート・音楽プログラムが実施されており、利用者は楽しみながらリフレッシュやフレイル予防、心身の健康管理が可能です。

そこでこの記事では、老人ホームでのアート・音楽プログラムの効果や種類、導入事例などをまとめて紹介します。

1. 高齢者の趣味活動とアート・音楽プログラムの重要性

高齢者の健康や生きがいづくりとして、趣味活動が注目されています。特に、アートや音楽を取り入れたプログラムは、従来の趣味活動とはひと味違った効果をもたらし、高齢者の生活をより豊かにする可能性が期待できます。

高齢者がアートや音楽など趣味活動で得られる効果は下記の4つ挙げられます。

1. 健康維持
趣味活動を通じて体を動かす機会が増え、筋力や体力向上に役立ちます。また、ストレス解消やリラックスにも効果的です。日常生活での軽い運動により、生活習慣病の予防にもつながります。

2. 認知機能の向上
脳の活性化に役立つ趣味活動は、認知機能の維持・向上にも大変効果的です。特に、アートや音楽などのクリエイティブな活動を続けると、記憶力や思考力、集中力の向上が期待できます。

3. 社会交流の促進
同じ趣味を持つ仲間と交流することで、日常でのコミュニケーションを通して社会的孤立を防ぎ、生きがいを見つけることができます。また、新たな人間関係を築くきっかけにもなります。

4. 生きがいの創出
趣味活動には、高齢者の日々の生活に張り合いを与え、生きる喜びを感じさせてくれます。自分の好きなことに集中する時間を重ねることで、日常生活の中で達成感や充実感が得られます。

従来の趣味活動に加え、アートや音楽を取り入れたプログラムを取り入れると、次の効果ももたらします。

1. 五感を刺激する
視覚、聴覚、触覚などの五感を刺激するため、アートや音楽により脳を活性化させます。また、五感の刺激で高齢者の感性を豊かにし、創造性や集中力、やる気といった認知機能やメンタルヘルスの向上にも繋がります。

2. 表現力を高める
アートや音楽を通して、自分の思いや感情を表現でき、コミュニケーション能力や自己表現力が高められます。普段言葉で表現しづらい心の内側を、絵や工芸、音楽演奏などで表現できるのが魅力です。

3. 共感力を育む
他者の作品に触れることで、共感力や想像力を育むことができます。また、共同で作品作りを通じ、作業を協力しあったり、感想や意見を出し合うなど、協調性やコミュニケーション能力もアップします。

4. 創造性を発揮する
アートや音楽は、自由な発想や創造性を発揮するきっかけに役立ちます。新しいことに挑戦するだけで、普段受けられない新しい刺激となるため、脳の活性化に効果的です。

ここで挙げた目的や効果を十分に引き出し、高齢者の心身の健康増進や豊かな生活のサポートに繋げる視点が重要です。

参照:アートが拓く超高齢社会の可能性―高齢者の潜在力を引き出すアートのポテンシャル _ ニッセイ基礎研究所

2. 老人ホームのアート・音楽プログラムの効果と具体例

老人ホームで取り入れられているアートや音楽プログラムの具体的な効果と事例を紹介します。

アート・音楽プログラムには、下記の効果が期待できます。

• 認知機能の向上
音楽を聴いたり歌ったりすると脳の血流が促進され、記憶力や思考力、集中力の向上効果が期待できます。アート活動を通して、新たな知識や経験を得られるため、脳の活性化にも効果的で、老人うつなどメンタル疾患の予防にも繋がると言われています。

• ストレス軽減
音楽やアートに没頭する時間を持つことで、日々のストレスや不安から解放されリラックス効果が高まります。また、創作活動を通して達成感や充実感といったやりがいが得られ、ストレス解消にもつながります。

• 脳の活性化
音楽やアートには、脳の様々な領域を刺激し活性する効果が高いです。特に、記憶力や思考力、創造性に関わる前頭前皮や海馬などの部位への刺激により、脳全体の機能向上を図れます。

      • 社会参加意識の向上
      同じ趣味を持つ仲間と交流すると、他者とのコミュニケーションに喜びを感じます。人によっては、地域イベントへの参加や生涯学習への取り組み、社会貢献活動にも積極的に取り組む方もいます。

      • QOL(生活の質)の向上
      健康状態や精神的な安定、社会的なつながりが強化されるため、QOL(生活の質)向上効果が期待できます。

      参照:『高齢者の芸術文化活動 抑うつ発生を20%減』|国立長寿医療研究センター

      参照:高齢者の社会参加活動 _ 健康長寿ネット

      老人ホームでは、下記のようなプログラムの導入例があります。

      1. 音楽療法
      ●歌唱
       歌いやすい曲を選んで、みんなで歌ったり、合唱したりします。
      ● 演奏
       楽器演奏の経験者向けには、合奏やアンサンブルなどのプログラムも企画できます。
      ● 音楽鑑賞・環境音リスニング
       クラッシック音楽や自然の音などを聞きながら、リラックスします。

      2. アートセラピー
      ● 絵画
       自由に絵を描いたり、テーマを決めて作品作りをしたりします。
      ● 造形
       粘土や紙粘土を使って、立体作品を作ります。
      ● 書道
       筆と墨を使って、頭や手を使った書道を楽しみます。

      3. その他
      ● 合唱
       みんなで声を合わせて歌うことで、全身運動につながる上、利用者同士の一体感を高めます。
      ● ダンス
       簡単な振り付けで、体を動かします。
      ● 演劇
       簡単な台本を使って、演劇に挑戦し、日頃使わない役割を楽しみます。

      上記のプログラム例はあくまでも一例であり、施設や参加者のニーズに合わせて自由にアレンジされています。

      参照:『特別養護老人ホームにおける音楽療法の効果 (3)』|関谷正子|北翔大学学術リポジトリ

      3. まとめ

      老人ホームやデイサービスでのアート・音楽プログラムを続けることで、高齢者の心身の健康増進や、豊かな生活を送るためのサポートに役立ちます。多くの老人ホームでは、より効果的なプログラムを実施できるよう、プログラムの内容や導入方法を工夫しています。

      趣味活動は、心身機能の低下が見られる高齢者にとって、個々で取り組むことはハードルが高いため、日常生活をより豊かにする取り組みとして老人ホームやデイサービスのアート・音楽プログラムを活用してみましょう。