老人ホームに住民票は移さないといけない?

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「老人ホームに入居した場合、住民票は移さなければならないのだろうか?」

老人ホームへの入居は、住み慣れた自宅から新たな生活場所へと移るため、人生の後半で大きな節目となります。

ただ、自宅をそのままにして入居するケースもあれば、手放すケースもありますが、そこで問題となるのが「住所」です。

そこで、この記事では、老人ホームへの入居と住民票の取り扱いについて、その手続きや法律的な背景を解説します。

老人ホームに住民票を移す理由

老人ホームへの入居は、入所する高齢者一人だけの問題ではなく、家族全体を巻き込む大きな決断です。そのため、さまざまな問題が生じますが、その中でも特に住民票をどうするかで悩む方が多く見受けられます。

結論から言うと、老人ホームに入居する際、住民票を移すことが原則です。その理由は次の3つです。

理由1 公的な手続きや公共サービスがスムーズになる

まず、一番大きな理由として挙げられるのが、公的な手続きやサービスの利用のためです。

たとえば、医療保険や年金などの社会保障の利用や、各種証明書の発行、税金の納付、選挙の投票など、生活に密接に関わる公的な手続きは、原則として住民票の所在地に基づいて行われます。また、各自治体による介護保険サービスや福祉サービスの利用も、住民票の所在地によって提供されています。

理由2 医療や健康管理がしやすい

次に、健康状態の変化に臨機応変の対応ができることも、住民票を移す大切な理由です。

老人ホームに入居する高齢者の中には、特別な医療ケアや介護が必要な方も少なくありません。もし、住民票を老人ホームの所在地に移していないと、必要な医療や介護サービスを受けるのが難しくなることがあります。また、体調の急変など、緊急時に対応がスムーズに進まなくなる可能性があります。そのため、高齢者がその都度必要とするケアを適切に受けるためには、住民票を移転しておくことが望ましいと言えます。

理由3 家族の対応が楽になる

さらに、介護にまつわる家族の対応を楽にするためにも、住民票を異動することがおすすめです。

遠距離介護のように家族が遠くに住んでいる場合や、身近に介護する家族がいない場合、心身状態の低下した高齢者自身でさまざまな公的手続きを行うのは難しいからです。そこで、住民票を老人ホームのある自治体に移すことで、その地域の公的支援を受けやすくなるというメリットがあります。

もちろん、最終的に住民票を移すかどうかは、高齢者本人の状況や希望、家族の意見などを総合的に考慮して決めることが大切です。住民票を移すこと自体は簡単な手続きですが、その結果として高齢者本人や家族の生活や介護のしやすさ、安心感などを含めて判断しましょう。

老人ホームへの住民票異動の手続きと注意点

老人ホームへの入居に合わせて住民票を移動する際には、老人ホームの所在地がある市区町村役場で手続きが必要です。具体的な、住民票の異動手続きは、基本的に以下のような流れになります。

◆住民票の異動の2つのステップ

ステップ1 現住所の市役所で転出届を出す

まず、現在の住所地の市区町村役場で「転出届」を提出します。

ステップ2 新住所の市役所で転入届を出す

次に、新しい住所地(つまり老人ホームがある場所)の市区町村役場で「転入届」を提出します。ちなみに、同じ市区町村内で引っ越す場合は、「転居届」に記入します。

なお、住民票の手続きは、原則として本人が行う必要があります。ただし、体調や状況によっては代理人が行うことも可能です。その場合、必要な書類(委任状や本人確認書類等)の提示を求められますので準備しておきましょう。

◆住民票の異動の注意点

老人ホームへの住民票の異動には、タイミングにも注意が必要です。入居前後での手続きとなることが多いですが、自治体や老人ホームによっては、指定のタイミングで手続きを求められることもあります。

また、住民票の異動と合わせて、旧住所宛ての郵便物の受け取りができるように、郵便局で転居届を提出しましょう。郵便物が転送される転居届は、郵便局のホームページ上でも手続きできます。

このように、住民票の異動は少々手間がかかる手続きではありますが、高齢者本人の生活の安心度が上がり、家族の利便性も高まるなどメリットは大きいです。手続きには細心の注意を払いつつ、老人ホームでの新しい生活をスムーズにスタートさせましょう。

まとめ

老人ホームへの入居と住民票の異動は、高齢者本人の状況とニーズ、家族の介護スタイルなどに深く関わる問題です。ぜひ、大切な家族が老人ホームへスムーズに引っ越しでき、快適な暮らしをスタートできるように、住民票の手続きを忘れないようにしましょう。