介護保険料の滞納が増えている理由

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経済的に苦しい生活を送る高齢者の中には、介護保険料を滞納するケースが増えています。

もし介護保険料を滞納すると、どのようなペナルティがあるのでしょうか。滞納したときや納付が困難なときには、どういった方法があるのでしょうか。

そこでこの記事では、介護保険料の滞納について、滞納によるペナルティや納付ができないときの方法について紹介します。

介護保険料の滞納者、差押えが増えている

ここ数年、経済的な理由や保険料の上昇などによって、介護保険料を滞納する高齢者が増加傾向を見せています。

厚生労働省によると、2020年度に介護保険料の滞納で差押え処分を受けた高齢者は1万7592人。前年の2019年度は過去最多の2万1578人だったため、数字の上では減少しました。

しかし、実態はコロナ禍で回収業務が滞った影響に過ぎず、差押え処分件数は増加しているのが現状です。

介護保険料を滞納してしまう原因

介護保険制度は40歳以上の国民が公平に負担するしくみです。したがって、滞納者にはペナルティが課せられたり、最悪の場合は財産の差押え処分を受けたりすることになります。

なぜ介護保険料の滞納者が増えているのでしょうか。

収入の減少や物価の値上がりによる家計の悪化もありますが、介護保険料が3年ごとに引き上げされてきたのも大きな原因です。

介護保険制度がスタートした2000年4月の介護保険料は、全国平均で1人あたり月額2,911円でした。しかし、2015年度から2017年度の3年間の介護保険料は1人あたり5,514円で2倍近く上昇しています。

年額換算すると2000年度〜2003年度は年間約3万5千円だった介護保険料は、2015年度〜2017年度には約6万6千円になりました。低年金だけで生活している高齢者の中には、「それまで納めることができていたが、年々引き上げられて滞納するようになった」というケースが増えているのです。

また、支払いを忘れて未納状態が続いている事例も少なくありません。65歳以上の場合、年金受給額18万円以上の方は介護保険料を年金から天引き(源泉徴収)されています。しかし、18万円未満の場合は、普通徴収といって納付書または口座振替によって支払わなければなりません。

そのため、「納付書は届いていたが、支払い忘れていた」「口座振替になっているものの引落日に残高不足で未納が続いている」といった恐れがあります。

介護保険料を滞納するとどうなるの?

納付書または口座振替による「普通徴収」の方で介護保険料の滞納が続いた場合、どのようなペナルティがあるのでしょうか。

滞納期間により、次の順でペナルティは重くなっていきます。

● 督促手数料と延滞金
● 給付制限
● 財産の差し押さえ

ひとつずつ見ていきましょう。

● 督促手数料と延滞金

最初の納付が遅れると、納付期限後20日以内に督促状が届きます。督促手数料や延滞金は自治体によって異なります。

● 給付制限

介護保険料の滞納が1年以上続いた場合は、滞納期間に応じて次のようなペナルティを受けます。

(1)滞納期間:1年〜1年6か月
(滞納金額:6万〜9万円前後)
介護サービスを利用した際、一旦利用料の全額(10割)を支払わなければならなくなります。

通常は1割〜3割の自己負担額の支払いで済むところ、滞納が解消するまで一時的に10割を支払い後、返還申請をすることになり、手続きの手間と経済的負担が生じます。

(2)滞納期間:1年6か月〜2年未満
(滞納金額:9万円〜12万円前後)
介護サービスの利用料が10割、すべて全額負担になります。

それまで9割〜7割あった介護保険給付が一時的に停止されて保険料の滞納分に充当されるためです。

滞納期間1年6か月までは返還申請の手続きをすれば、自己負担割合を超えた金額が戻っていましたが、これ以降は10割負担のままとなります。

(3)滞納期間:2年以上
(滞納金額:およそ12万円以上)
介護保険サービスの自己負担割合が、1割から3割負担に変更されます。

なお、介護保険料は2年以上滞納すると時効となり、過去の滞納分の納入ができなくなります。

● 財産の差押え

税金の滞納と同じく、介護保険料の滞納でも最悪の場合は財産の差押えが執行されます。

納付が困難になった場合はどうすればいい?

介護保険料を滞納すると、通常の自己負担割合では介護サービスが受けられない、最悪の場合は差押え処分がある、など必要な介護を受けたくてもさまざまな支障をきたしてしまいます。

もし、介護保険料の支払いが難しくなったときは、次のような方法を検討しましょう。

● 介護保険料減免制度

自治体の介護保険窓口に申請すると、条件を満たせば介護保険料の減免が受けられる場合があります。

● 生活保護

介護保険料をはじめ税金や保険料、医療費など、健康を支える最低限の支払いも困難な場合は、生活保護の申請を考えましょう。

まとめ

経済情勢の悪化や収入の減少などで介護保険料を滞納するするケースが増えています。滞納が続くとさまざまなペナルティが課せられるだけでなく、必要な介護サービスが受けられなくなることもあるため注意が必要です。

支払いが困難になったときは、早めにケアマネジャーや介護福祉の窓口に相談するなどして、適切に対応していきましょう。

◆ 参考URL

高齢者の介護保険料滞納、差し押さえ18%減…新型コロナで回収滞る _ 読売新聞オンライン

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