
近年、「超高齢化社会」や「人生100年時代」という言葉をよく聞きます。どちらも「長生き」を意味する言葉ですが、人によって感じ方は異なるでしょう。長生きできて嬉しいと感じる方もいれば長生きするなんてまっぴらだと感じる方もいるかもしれません。高齢となれば誰もが健康や介護の不安があります。また、経済的な悩みもあるでしょう。高齢になっても毎日が穏やかに楽しく暮らせる方法はないのでしょうか。
ここでは、高齢者が毎日を生き生きと暮らす為の「健康寿命延伸」について解説しています
健康とは
皆さんは「健康」とはどんな状態を思い浮かべますか?一般的には病気のない身体を健康だと言いますよね。しかし、WHO(世界保健機関)では次のように定義しています。
「健康とは、肉体的、精神的及び社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」
つまり、身体的な病気があっても精神的、社会的に良好であれば健康であるということです。高齢ともなれば誰でも一つや二つの病気は抱えていますよね。ですが、身体的な病気に捉われることなくお一人お一人が生き生きと心豊かに過ごせることが健康の定義だと言えそうです。
平均寿命と健康寿命

皆さんもご存知のように、我が国の平均寿命は年々延びていて今年(2021年)は過去最高を更新しています。ちなみに、女性の平均寿命は世界1位で87.74歳、男性は81.64歳で2位となっています。寿命が延びることは大変喜ばしいことですが、それには条件があります。
その条件とは「健康」であること、だとは思いませんか?ここで考えなくてはならないのが「健康寿命」についてです。健康寿命というのは、日常の生活を制限されることなく健康的に生活できる期間のことを言います。ここで言う制限の意味は病気や介護などを指すもので、自立して生活できない状態をあらわします。そして、平均寿命と健康寿命の差があまりないと死を迎える直前まで健康的な日常を過ごせていたということです。しかし、平均寿命と健康寿命の差が開くと健康ではない状態が長くなるということになります。
健康寿命を延ばそう

先述のように日本人の平均寿命は年々延びていますが果たして喜んで良いのでしょうか。
たとえば、女性の平均寿命が84.93歳だった2001年の健康寿命は72.65歳でした。その差を計算すると、何と、12.28年もあるのです。これは何をあらわすのかと言うと、12.28年も健康ではない状態で過ごし亡くなったということです。健康ではない状態で12.28年を生きることは容易ではありませんよね。
日本の長寿を皆で喜ぶためには健康寿命を延ばし平均寿命との差を縮めて行かなくてはなりません。健康寿命を延ばすために何ができるのでしょう。
健康寿命延伸の鍵は生活習慣病の予防

高齢者がかかりやすい病気には脳血管障害、認知症、心筋梗塞、肺炎、糖尿病などがあります。これらの病気は生活習慣と大きく関わっていることから生活習慣病を防ぐことが健康寿命延伸の鍵となりそうです。その予防法が下記になります。
・栄養バランスのとれた食事
健康維持のために欠かせないのが食事です。年を取ると思うように食事がとれなくなるため栄養状態が悪くなる人が多くいます。栄養状態が悪くなると当然、体力も免疫力も低下してしまい病気になりやすくなるので必要な栄養をとれるようにしたいものです。
必要な栄養と言っても特別に用意するものではなく、お米やパン、麺類などの主食を中心に肉や魚、卵などの主菜、野菜やキノコ類、海藻類などの副菜、間食に果物や乳製品などをとれるように工夫しましょう。
また、高齢になると筋力が低下するのでタンパク質をしっかり摂取したいものです。どうしても、タンパク質の肉や魚が苦手だという人は大豆類や乳製品を積極的にとり入れましょう。サプリメントを利用するのも良い方法ですね。
・適度な運動
筆者の私事になりますが、私は毎朝軽いストレッチ&筋トレを済ませてから30分程のウォーキングに出ます。ウォーキングで行き交う人は後期高齢者の方が多くいますが皆さん、とてもお元気です。年齢を聞くと驚いてしまうほど若く見え明るい方ばかり。そして何よりも嬉しいのが、冗談を言い合って大きな声で笑えることです。朝から思い切り笑うので気分もスッキリ、朝食も美味しく食べられます。

ウォーキングや水泳などの適度な運動をすると、心肺機能を高め、骨を丈夫にする効果が期待できます。また、筋肉が衰えやすい高齢者には筋トレもおすすめです。筋トレと言うと、きつい運動を想像してしまいますが、たとえば、椅子の背もたれに手を置いてスクワット、スクワットがきつければ踵(かかと)の上げ下ろしでも良いでしょう。適度な運動を毎日少しずつ行うことで体力がつけば寝たきりを防げるだけではなく病気による死亡のリスクも低くなると言われています。更には、大きな声で笑うことが健康効果絶大ですね。
・質の良い睡眠
高齢者には眠れないという方が多くいます。夜は早く寝るのだけど夜中にトイレに起きてそのまま眠れなくなるのでしょう。多いと3~4回トイレに起きるので睡眠不足になりますよね。睡眠不足になると日中眠くなり、やりたいことが思うようにできずイライラの原因に。

夜中のトイレが多いのはもしかしたら昼間コーヒーやお茶を飲みすぎていたりしませんか?コーヒーやお茶にはカフェインが含まれているので睡眠を覚醒する働きがあります。カフェインが含まれているコーヒーやお茶はなるべく控えノンカフェインの飲み物にしましょう。
また、夕食時にお酒を飲みすぎると睡眠の妨げになります。お酒を飲むとトイレに起きるだけではなく喉が渇いたりして眠りを浅くしてしまうのです。昨今、定年を機にアルコール依存症になる高齢者が増えています。お酒好きな人も必ず休肝日を設けて適量を心がけましょう。昼寝をする場合は20分程度にして寝すぎに気をつけます。

ここまで生活習慣のほとんどを占める食事、運動、睡眠を見てきましたが、もうひとつ忘れてはならないものに喫煙があります。日本でも健康増進法が改正された2019年から全国的に喫煙が難しくなっていますが健康維持のためにも禁煙をおすすめします。
まとめ

今回は高齢者が生き生きと元気で過ごすための健康寿命延伸についてお話してきました。その鍵となることが生活習慣病の予防になるわけですが、それだけでは健康は維持できません。健康を維持するためには、他者と関りを持ち精神的にも社会的にも自立することが非常に大事です。運動のところでもお話しましたが、毎日一人で黙々と歩いているだけでは長続きしません。ほんの2~3分でも先輩方とお話することで、「また明日も頑張ろう!」という前向きな気持ちになれるのです。
人生において健康だけがすべてではありませんが、健康でいれば心豊かな老後を楽しむことができます。
皆さんも明日の朝は外に出て「おはよう!」と声をかけてみませんか!