
終活とは生前整理のことで、いらないものを処分して、お気に入りの必要なものだけを身の回りに残しておく作業です。持ち物のスリム化のほかにも、財産も明確にしておきたい一つです。高齢になると体力も事務能力も衰えてくるので、出来ればまだ現役の50代から終活を始めるのがベターと言えます。

次に見直すのが、健康診断で生活習慣病を指摘されることが多い、還暦を迎える60歳ぐらいがおすすめです。そして70歳には、エンディングノートや財産目録を書きあげ、家族と共有しましょう。
50歳でやっておきたいこと
50歳の早い段階でやっておきたいことは大型家具の処分や、大事なもののリスト作成です。
まだ、エンディングノートや財産目録を書くには早すぎると思われるでしょうが、50歳の時点での覚え書き程度でよいので書いておきましょう。エンディングノートは法的な効力はなく、何を書いても大丈夫です。
大型家具の処分

体力と決断力がある50代のうちに洋服ダンス、整理ダンス、和ダンス、サイドボード、机、本箱、食器棚、ソファ、絨毯、カーペットなどのなかから要らないものを処分しましょう。
ネットなどで調べて、信頼できる不用品回収業者の見積もりを幾つか取り、一気に処分するのも一つの方法です。トラックに積み放題プランなどもあるので参考にしましょう。
大事なものの確認とリスト作成
次のようなものを確認し、金庫などに収め、暗証番号はパートナーや信頼できる身内と共有しましょう。

健康保険や年金手帳、個人年金、生命保険、損害保険などの保険証書、銀行郵貯などの預貯金通帳、不動産関係の権利書、株等の有価証券、クレジットカードなどの確認をします。
50歳の時点で財産価値のあると思われる物品のリストの作成を行います。例えば宝石や自動車、骨董品などです。
現役世代の50代のエンディングノートには、仕事関係の連絡先やかかりつけの病院などを書いておき、家族と共有することをおすすめします。
60歳でやっておきたいこと

50歳から10年の歳月が経つと、状況もずい分違ってきます。財産が増えている場合もあれば、様々な理由から減っている場合もあるでしょう。今一度確認し、財産目録とエンディングノートには、もしもの時に家族に伝えたいことを具体的に書いておきましょう。
財産目録の作成
財産価値があるものを書きだして確認します。50歳の時点で作ったリスト表より、さらに具体的に書き出してみましょう。リスト表は自分のための覚書ですが、財産目録は遺言書の様な法的な効力はないものの、作成者がもしもの時に遺族が助かります。
価値がある財産として考えられるのは、貯金通帳、株式、手形、国債、社債、小切手などの有価証券、土地、家屋などの所有権を証明する書類、生命保険の証書、現金、家具、貴金属、骨董品、自動車などです。その他ほかにも、お金に換えられるようなものはすべて書き出しておきましょう。また、ローンや借金は負の財産になるので、あれば書いておきましょう。

エンディングノートの作成
エンディングノートも財産目録と同様に覚書のようなもので、遺言状と違い法的効力はありません。決まった様式はなく、自分史のような形式で書き進めても、何を書いても問題ありません。具体的に延命処置などについての自分の考えを書いたり、もしもの時に訃報を知らせてほしい人の住所や電話番号を記したりしておくとよいでしょう。
その他にも、お葬式やお墓をどのようにしてほしいかや、菩提寺や宗派、家紋など、遺された人に伝えたいことをすべて書いておきましょう。
遺言書を作成する場合
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言、特別方式遺言の4つの種類があります。
自筆証書遺言は自分で書きますが、偽造の恐れがあります。公正証書遺言は遺言書の案を作って、公証人役場に行って作成してもらう必要があり、公証人以外に2名の立ち合いの証人が必要で、それなりの費用がかかります。秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも公開せずに、遺言の存在のみを、公証人に証明してもらう遺言です。特別方式遺言は特殊な状況で作成する遺言のことで「普通方式遺言」とは違った遺言です。一般的には公正証書遺言が利用されていることが多いようです。
相続税の対策

相続税は、相続する人数によりますが1人の場合、保有している全ての財産の合計額が4,200万円以上の財産を持っている人にかかります。自分の財産を早めに把握しておけば、生前贈与などで税金対策をすることもできます。税金対策についてはセミナーを受講したり、ネットなどで調べてみたりしましょう。
70歳でやっておきたいこと
総務省統計局の国勢調査によると、2040年には単独世帯の割合が、全体の約40%になると予測されています。高齢者のひとり世帯は増加傾向にありますが、70歳は終の棲家をどうするかを迷う年齢でもあります。
2015年に厚生労働省が発表した健康寿命(健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)は、男性が71.19歳、女性は74.21歳です。パートナーがいるいないにかかわらず、将来介護が必要になった時に備え、どの様に暮らしたいかを具体的に考えておきましょう。
自分自身で老人ホームを探しておく

近年では早々と自分で老人ホームを探して入居する人が増えています。
契約説明書の内容を理解し、金銭の計画を立てる能力のあるうちに自分にはどのような形態の老人ホームが望ましいのかを検討しておくことも、70歳でやっておきたい一つです。
「自立者向け有料老人ホーム」は、自立の状態から受け入れが可能で、そこで終身過ごせます。「健康型有料老人ホーム」や「住宅型有料老人ホーム」、「介護付有料老人ホーム」などがあります。費用は高めのところが多いようです。
「サービス付き高齢者向け住宅」は「自立者向け有料老人ホーム」よりは低めですが、なかには高いところもあります。
要支援や要介護者対象の「住宅型有料老人ホーム」や「介護付有料老人ホーム」の費用は様々です。
元気なうちに「サービス付き高齢者向け住宅」に入り、介護度が進んだ時点で、終身過ごせる「要介護者向け有料老人ホーム」に転居する方法もあります。
まとめ

「備えあれば憂いなし」と言いますが、言ってみれば終活は死と向き合うことでもあり、だれもが先送りにしたいことです。
しかし、避けては通れないことなので、人生の節目ごとにその時点での自分の思いや考え、財産などについて明記しておくようにしましょう。