高齢者ドライバーの交通事故は増えている?免許返納以外の対策とは

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高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっていますが、実際の事故件数や傾向はどうなっているのでしょうか。

そこでこの記事では、最新の統計データを基に高齢ドライバーの事故の現状や高齢者特有の原因に触れた上で、免許返納以外で効果が期待できる対策についてまとめて紹介します。

高齢ドライバーの交通事故の現状

高齢ドライバーによる交通事故は、全体の事故件数が減少する中で依然として高い割合を占めています。警察庁の統計によると、2022年の65歳以上の高齢ドライバーによる事故件数は、10年前と比べて65.9%に減少しました。しかし、全体の事故件数に占める割合は16.3%から24.4%に増加しています。

特に75歳以上の高齢運転者の事故特徴として、工作物衝突や路外逸脱といった単独事故が多い傾向が見られます。事故原因の第1位は「操作不適」で、ハンドルの操作不適とブレーキとアクセルの踏み間違いがその大半を占めています。

また、75歳以上の高齢運転者と75歳未満の運転者の死亡事故率を比較すると、75歳以上は免許保有者10万人当たり5.7件で、75歳未満の2.5件の約2.3倍となっています。この数字からも、高齢ドライバーの事故リスクの高さがうかがえます。

高齢ドライバーの運転能力低下のメカニズム

高齢ドライバーの事故が増加する背景には、加齢に伴う身体機能の変化があります。視力や動体視力の低下、反射神経の鈍化、筋力の衰えなどが運転能力に影響を与えます。

特に注目すべき点は、認知機能と運転技能の関係です。従来、認知症との関連が指摘されていましたが、警察庁の調査によると、死亡事故を起こした75歳以上の高齢ドライバーのうち、約6割は認知機能検査で「認知機能低下のおそれなし」と判定されていました。このことから、認知機能だけでなく、運転技能の低下も重要な要因であることがわかります。

さらに、問題なのは自身の能力低下を自覚しにくいことです。運転免許を保有している65歳以上の男女を対象としたアンケートでは、約半数が「とっさの動作や複雑な動作がスムーズにできなくなった」と回答しています。しかし、長年の運転経験から過信や慣れが生じ、危険な状況に陥りやすくなっています。

免許返納以外の事故防止対策

高齢ドライバーの事故防止と言えば「免許返納」をイメージする方が多いかもしれません。ただ、特に地方では、買い物や通院といった日常生活の足として車は切っても切れないアイテムとなっています。

そこで、免許返納以外の対策を見ていきましょう。

まず、安全運転サポート車(サポカー)の活用が挙げられます。2021年時点で新車の97%に自動ブレーキが搭載されており、障害物を検知して自動でブレーキをかける機能が標準装備となっています。

既存の車両に対しては、後付けの安全運転支援装置の導入も効果的です。例えば、急発進防止装置は低速走行中の急なアクセル踏み込みを防止し、踏み間違い事故のリスクを軽減します。

定期的な運転能力チェックも重要です。2022年5月から導入された「運転技能検査」は、75歳以上の高齢ドライバーを対象に実車での運転技能をテストします。この検査を通じて自身の能力低下を客観的に認識し、適切な対策を講じることができます。

さらに、家族や地域での見守りと対話も欠かせません。運転について家族と話し合い、客観的な評価を受けることで、自身の運転状況を再確認することができます。

高齢者の移動手段確保への取り組み

高齢ドライバーの安全対策と並行して、運転をやめた後の移動手段の確保も重要な課題です。

多くの自治体で、運転免許証の自主返納を促進するための支援策が実施されています。免許返納者にタクシーの乗車券や公営バスの交通回数券、ICカード乗車券などを提供したり、運転経歴証明書の提示でタクシー料金の割引や飲食店でのサービスを受けられたりできる自治体が増えていきました。

地域交通システムの整備も進められており、コミュニティバスやデマンド交通の導入、既存の公共交通機関の利便性向上などが図られています。

また、シェアリングサービスの活用も注目されています。カーシェアリングや相乗りサービスなど、新しい移動手段の選択肢が増えつつあります。

まとめ

高齢ドライバーの交通事故問題は、一朝一夕には解決できない複雑な課題です。しかし、安全運転サポート車の普及や運転支援装置の活用、定期的な健康チェックなど、できることから始めていくことが大切です。同時に、運転をやめた後の移動手段の確保も重要な課題であり、地域ぐるみでの取り組みが求められています。

高齢者の方々が安心して外出できる社会は、すべての人にとって暮らしやすい社会でもあります。技術の進歩と人々の意識改革、地域の支え合いによって、高齢者の安全と自由な移動の両立を目指していきましょう。


参照:高齢ドライバーによる重大事故を防ぐには _ 安全運転ほっとNEWS _ 東京海上日動火災保険
参照:高齢者の運転は危ない _ 現状やリスク、事故防止に必要な対策を説明|朝日新聞
参照:高齢ドライバーの交通事故は増加中?高齢者による事故を減らす方法|三井住友海上