親の介護は子の責任?家族の分担と介護への備え方

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親の介護は家族にとって重要な責任ですが、子のそれぞれの立場により捉え方が異なる場合が少なくありません。そのため、親の介護状態や生活環境をはじめに子の生き方に応じた役割分担が求められます。

そこでこの記事では、介護における家族の責任や役割分担、経済面や心の準備、そして介護サービスの活用法について紹介します。

親の介護に対する家族の責任とは

不動産メディア「幸せおうち計画」運営の株式会社AZWAYが行った調査によると、両親の介護について話し合ったことがあるのは約46%でした。介護が必要になった場合の希望は「施設入所」がトップで、介護を主に「自分」が担当すると回答しています。また、両親の介護について不安を感じている人は9割を超えており、子として親の介護に対する心配は深刻と言えます。

親の介護の責任は子にあると言われ、日本では子が親の介護をするのが自然といった考え方が一般的です。もともと民法では、直系血族や兄弟姉妹、夫婦間に扶養・扶助の義務があると定められています。具体的には日常的な世話や経済的支援が含まれます。しかし、自身の生計を犠牲にしてまでサポートすべきものではありません。扶養義務の範囲は、本人の生活水準を維持できる範囲内での支援とされているからです。

そのため、日本の法律上、介護放棄は法律違反となり得るため、親との不和があっても特に経済的余裕がある場合には扶養義務を放棄できません。ただし、扶養義務が発生しないケースもあり、家庭裁判所が個々の事情に応じて判断します。

参照:【両親の介護は誰がする?】男女500人アンケート調査 _ 幸せおうち計画

参照:民法 _ e-Gov法令検索

介護の役割分担と介護サービスの活用法

親の介護が必要になった場合、子をはじめ家族・親族の責任で様々な取り組みが必要です。折に触れて、親の介護の役割分担をどのように分け合うかについて話し合う機会を持つことが推奨されます。

ただ、家族間での役割分担に対する考え方は、同居や別居、遠距離介護など、家族の状況に応じて異なります。そのため、家族内で支援の方法や担当を話し合い、計画を立てることが重要です。例えば、同居している家族が食事や掃除など日常の介護を担当し、遠距離に住む家族が介護費用の一部の支払いや定期的な訪問でカバーするといったケースが考えられます。

また、介護サービスとの連携も大切です。公的な介護保険サービスをはじめ、地域や民間のサポートの活用で介護費用の負担が軽減可能です。例として、デイサービスやショートステイ、訪問介護などを利用することで家族の介護負担を分散させ、より良いケアを長期的に続けられます。

重要なことは、家族がしっかりと話し合い、協力しながら、必要に応じて外部のサポートを積極的に利用することにあります。

参照:サービス一覧 / サービス紹介|独立行政法人福祉医療機構

親の介護への備え方

介護の準備は、経済的な側面と精神的な側面の両方から考える必要があります。

まず、介護にかかる費用の見積もりや費用に対する金銭的な備えが重要です。生命保険文化センターの調査によると、介護費用は場所によって異なりますが、在宅介護の場合の月額平均費用は4.8万円、施設介護の場合は12.2万円となっています。一時的な費用としては、住宅改造や介護用ベッドの購入費用が平均で74万円かかります。そして、介護期間は平均で5年1カ月となっており、長期間にわたりまとまった介護費用を備える必要があります。

一方で、精神的な準備としては、家族とのコミュニケーションを活発に行い、親子はもちろん子同士で介護に対する理解を深め、協力体制を築く姿勢が大切です。親の意向を尊重しながら家族ができる範囲のサポートとは何か、一人ひとりの役割分担などを事前に話し合い、具体的な計画を立てましょう。

もし介護でわからないことがあれば、地域にある地域包括支援センターやケアマネジャー、自治体の福祉の窓口、社会福祉協議会などに相談できます。

参照:介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?|公益財団法人 生命保険文化センター

家族間のコミュニケーション

親の介護を円滑に進めるには、家族間のコミュニケーションが不可欠です。早いうちから親を交えて介護について話し合う場を設け、家族会議を定期的に開催することをおすすめします。話し合いの機会を重ねることで各家族メンバーの考えや希望がよくわかり、意見の対立を避けることが可能です。

また、「人生会議」を通じて医療やケアの希望を事前に話し合い、本人の意向に沿った介護計画を立てることができます。

家族での話し合いや人生会議による取り組みを積極的に行うと介護を必要とする親本人だけでなく、ケアを担う家族全員の精神的負担を軽減し、親子や兄弟姉妹で納得できる介護を目指すことができます。

まとめ

親の介護は家族にとって大切な責任ですが、一人ひとりがどのように役割分担し介護に備えるかはさまざまです。家族間のコミュニケーションを通じて介護の方法や親の意向を踏まえた上で、経済的な準備と精神的準備の両方に取り組むことが重要です。

介護サービスの活用や「人生会議」は、親が希望するケアを実現するための第一歩となります。親の介護が気になり始めたら、家族で話し合う場を設け、早めに準備を進めましょう。