
口腔ケアは介護現場でも重視されており、老人ホームやデイサービスなどでは歯みがきや嚥下体操など口腔機能強化に取り組む施設が一般的です。
最近、口腔ケアは虫歯や歯周病、全身疾患の予防、健康寿命の延伸など、高齢者をはじめ全世代の健康維持に重要であると改めて注目されています。特に高齢者の場合、誤嚥性肺炎や栄養不足などのリスクを高める口腔機能の低下「オーラルフレイル」対策につながることが分かってきました。
本記事では、口腔ケアが注目される理由と、オーラルフレイル対策としての口腔ケアの重要性をまとめて紹介します。
口腔ケアが注目される3つの理由

近年、口腔ケアは単なる虫歯や歯周病予防にとどまらず、全身疾患予防や健康寿命延伸など、健康全般に重要な役割を担っていることが明らかになってきました。
下記で、口腔ケアが注目される理由3つを紹介します。
1.全身疾患の予防につながる
医学研究の進展により、口腔内の細菌が誤嚥性肺炎や糖尿病、心疾患などの全身疾患の発症リスクを高めることがわかってきました。
例えば、歯周病菌が原因で起こる誤嚥性肺炎は、高齢者の死因の第6位です。口腔ケアを徹底することで、誤嚥性肺炎のリスクを大幅に下げられます。また、糖尿病の合併症でもある歯周病により口腔内の炎症が続くと、血糖コントロールを悪化させ、糖尿病の重症化に繋がる可能性があります。そして、歯周病菌が血流に乗って心臓に運ばれ、心内膜炎や心筋梗塞などのリスクを高めます。
普段の口腔ケアにより、加齢と共に発症リスクが高まる様々な病気の予防が可能です。
参照:「ごえん – 「誤嚥性肺炎」をご存知でしょうか。|日本歯科衛生士会
2.健康寿命の延伸が期待できる
口腔機能の低下が続くと、食事や会話が難しくなる、社会的な活動に制限を受ける、QOL(生活の質)の低下を招き健康寿命を縮める、といった原因になります。

具体的には、厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者のうち、約5割が歯周ポケット(4mm以上)の歯周病にかかっていることが分かっています。しかし、口腔ケアと誤嚥性肺炎予防の関係についての研究では、一般の高齢者のうち肺炎の発症リスクは約19%であったのに対し、積極的に口腔ケアをした高齢者グループは約11%でした。肺炎による死亡率も、一般の高齢者約16%に対して、口腔ケアの高齢者グループは約7%だったと報告されています。
また、口腔ケアを怠るとコミュニケーション能力の維持が困難になり、歯や舌の機能低下で発音や会話に支障をきたす恐れがあります。口腔ケアによって、コミュニケーション能力を維持できれば、人との触れ合いも増え生き生きとした毎日を送る土台となります。
参照:「令和4年歯科疾患実態調査」の結果(概要)を公表します|厚生労働省
3.医療費の削減効果がある
口腔ケアを徹底すれば虫歯や歯周病の治療費が掛からなくなり、全身疾患の発症リスクが減って医療費全体も節約できます。
一例として、大阪警察病院のデータによると、歯科による口腔ケアを行った場合、医療費が約15%減少しました。仮に全国の病院で手術に際し口腔ケアを徹底すれば、推計約6,000億円の医療費を削減できる可能性が指摘されています。
オーラルフレイルとは?

オーラルフレイルとは「口腔機能の低下」を意味する言葉です。具体的には、
● 歯の喪失
● 噛む力や飲み込む力の低下
● 味覚の低下
などが挙げられます。
オーラルフレイルは単なる口の中のトラブルではなく、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが分かってきました。したがって、高齢者に限らず国民全員にオーラルフレイル対策が必要です。
噛む力が弱くなると食事量の減少で栄養不足や誤嚥性肺炎に繋がったり、歯周病菌などの口腔内細菌による全身疾患の発症リスクが高まったり、食事や会話が難しくなってQOL(生活の質)が低下するといった問題が起きます。
オーラルフレイル予防のための口腔ケア

毎日の口腔ケアによりオーラルフレイル予防に取り組みましょう。
口腔ケアのポイントは下記4つです。
● 歯磨きは1日2回、正しいブラッシング方法で行いましょう
● 歯間ブラシを使って、歯ブラシでは届かない歯間の汚れを落としましょう
● デンタルフロスで歯垢や食べかすを掃除しましょう
● 半年に1回は歯科医院で定期検診を受け、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療に努めましょう
参照:これってオーラルフレイル? − 心身の衰えはお口から − |国立長寿医療研究センター
まとめ

口腔ケアは、虫歯や歯周病予防だけでなく、全身疾患の予防や健康寿命延伸、医療費削減など、健康全般に役立つ生活習慣です。
特に高齢者にとって、口腔機能の低下は「オーラルフレイル」と呼ばれるお口のトラブルを引き起こし、誤嚥性肺炎や栄養不足などのリスクを高めます。
オーラルフレイル予防としては、歯磨き、歯間ブラシ、デンタルフロスで毎日の口腔ケアを徹底し、定期検診を習慣化することが大切です。
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