
加齢とともに増える。飲みこみ時の困難さは嚥下障害(えんげしょうがい)と呼ばれ、高齢者や特定の疾患を持つ人々にとって、日常生活で避けられない問題のひとつです。
しかし、食事がしづらい状態であっても食事の工夫によって、安全かつ健康的に楽しんで食べる方法があります。
特に、「介護食」と「嚥下食」はこうしたニーズに対応した食事方法として知られていますが、一体どのような違いがあるのでしょうか。
そこでこの記事では、介護食と嚥下食の違い、それぞれの特徴、具体的にどのように食事を工夫すればいいかについて詳しく紹介します。
目次
介護食とは?

介護食とは、主に高齢者や介護を必要とする人たちに向けて作られた特別な食事プランの一つです。このタイプの食事は、食材を柔らかく調理したり、食べやすいサイズに分けたりすることで、摂食が困難な状態にある人々にも栄養がしっかり摂れるように工夫されています。
対象とされる人々は、高齢で噛む力が減少している人や、手術や病気で一時的に食事に制限がある人たちです。
嚥下食とは?

嚥下食は、嚥下困難を持つ人たちに特化した食事プランです。この食事スタイルは、食材の形状や硬さを調整することで、飲み込む際の危険性(例:誤嚥)を最低限に抑制します。
この食事プランが対象とするのは、嚥下障害を抱える人、神経系の疾患がある人、または頭部や首に手術を受けた人たちです。進行性の疾患で飲み込む力が弱まっている人にも適用されることが多いです。
介護食と嚥下食の主な違い

介護食と嚥下食は、目的と対象者が異なるため次の3つの視点で判断する必要があります。
● 種類
● テクスチャー(食感:食材の固さ・粘度など)
● 栄養価
それぞれ特有の特徴を持っているので、以下で具体的に紹介します。
1.種類
・介護食
一般的な食材を柔らかくしたもの、練り製品、ペースト状の食品などがあります。主に食べやすさと栄養摂取を重視しています。
・嚥下食
ゼリー状、ペースト状、液体食など、飲み込み易さを一番に考慮した食品が多く見られます。
2.テクスチャー
・介護食
一般にやわらかく、または小さく切った食材が多いです。ただし、食材自体は基本的に形がある程度保たれています。
・嚥下食
飲みこむ際の誤嚥リスクを最小限に抑えるため、ペースト状やゼリー状に調理されることが一般的です。
3.栄養価
・介護食
栄養のバランスが考慮されていますが、食材を加工する過程でビタミンなどが失われる場合があります。
・嚥下食
飲みこみやすさを最優先するため、栄養価が少し劣ることもあります。そのため、栄養補給のためのサプリメントなどを併用することが推奨される場合もあります。
このように、介護食と嚥下食はそれぞれ異なる特徴とニーズに対応しています。両者とも介護の現場で必要な目的と対象者に合わせて工夫されており、食事がもたらす楽しさや安全性、健康を維持する役割を果たす調理法です。
飲みこみやすくするポイント

飲みこみが困難な人々にとって、食事は非常に大きなストレスとなる場合があります。
以下の3つは、飲みこみやすい食事を提供するためのポイントです。
● 材料の選び方
● 調理法
● 食事の進め方
特に3番目の「食事の進め方」は介護者や家族が工夫すると手軽に要介護者が食事を取る際の負担を軽減できるところです。
では、ひとつずつ見ていきましょう。
1.材料の選び方
・柔らかい食材を選ぶ(豆腐、魚、ゼリーなど)
・料理によっては、皮や種を取り除く
2.調理法
・食材を細かく切る、もしくはペースト状にする
・調理過程で水分を多めに加える(煮物やスープが良い例)
3.食事の進め方
・小さな一口サイズで提供する
・食事のペースを遅くし、各口についてよく噛むようにする
まとめ:介護食と嚥下食、どちらを選ぶべきかのポイントを押さえよう

介護食と嚥下食は、要介護者の状態に合わせてそれぞれ特徴と目的を別に設計されている調理法です。
介護食は一般的に食べやすさと栄養摂取を優先していますが、嚥下食は飲み込み易さを最も重視しています。
それぞれの食事形態に合った材料選び、調理法、食事の進め方を検討することで、飲みこみやすさと栄養のバランスを両立させられるでしょう。
この記事で紹介した工夫を取り入れると、食事をより安全かつ楽しいものにすることができます。