遠距離介護のメリット・デメリット

介護について  | 

離れて別々で暮らす親や家族に介護が必要になった場合、どのような介護の選択肢があるでしょうか。

遠距離介護もそのひとつです。

社会の変化や核家族化などによって、遠方の実家に通いサポートする「遠距離介護」が増加しています。 そこでこの記事では、遠距離介護について次のポイントを紹介します。

● 遠距離介護のメリット・デメリット
● 遠距離介護にかかる費用

遠距離介護を検討している方、よりよい方向へと見直したいと考えている方は、ぜひご一読ください。

遠距離介護とは

遠距離介護とは、介護が必要な親や家族を、離れて暮らす別の家族が介護してサポートすることを指します。

仕事や結婚など、核家族化により親子が離れて暮らす家庭が多い日本では、在宅介護が難しく遠距離介護を選ぶケースが増えています。

厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、介護をしている人のうち遠距離介護をしている割合は2013年で9.6%、2016年で12.2%、2019年では13.6%と増加傾向にあります(参考サイト)。実に介護をしている人の約10人に1人今後も遠距離介護の割合は増えていくと予測されています。

【参考サイト】
厚生労働省「国民生活基礎調査」
要介護者等との続柄別主な介護者の構成割合 
「別居の家族」
2013年 9.6% (IV 介護の状況 PDF[348KB]参照)
2016年 12.2% (IV 介護の状況 PDF[3,168KB]参照)
2019年 13.6% (IV 介護の状況 PDF[756KB]参照)

なぜ遠距離介護を選ぶ介護者が増えているのでしょうか。

現代日本では、親子が別々で暮らすライフスタイルが一般的です。親は実家に住み続ける一方で、地方出身のこどもは進学や就職で都会に出て行き、そのまま定着することが多くなっています。

そのため、親の介護が必要になった場合、こどもが実家に戻って同居介護するのも、こどもの自宅に住まわせるのも難しい家庭が少なくありません。さらに、同居介護ができないからといって、老人ホームに入所させるのは親もこどもも気持ちの整理がつかない、といった理由もあるでしょう。

このように、遠方で別居で暮らす親の介護問題は、一筋縄ではいかないケースが増えているのです。

そこで遠距離介護を選ぶと、親とこどもは別々の住まいで暮らし続けられる上に、介護の問題も解決できます。

遠距離介護のメリット・デメリット

遠距離介護にはどのようなメリットやデメリットが考えられるのでしょうか。

メリットとデメリットに分けて紹介します。

♦︎ 遠距離介護のメリット

遠距離介護のメリットは次の3つが挙げられます。

・住まいを変えることなく介護ができる
・介護者の負担が軽減できる
・介護サービスを利用しやすくなる

とくに、2番目の「介護者の負担が軽減される」という点は、介護をする人のストレスを減らして、息の長い介護を続けるために大切なポイントです。

では、ひとつずつ見ていきましょう。

・住まいを変えることなく介護ができる

親は住み慣れた実家で、こどもは仕事や結婚などで離れられない自宅で、そのまま暮らせます。そのため、介護のために仕事やキャリアを諦める介護離職をすることなく、親の介護が可能です。介護する側の生計や人生に大きな影響を与えることなく、親のサポートが続けられます。

・介護者の負担が軽減される

同居して介護をする場合、日常生活で親の介護を第一に考えた生活リズムに変わってしまいます。介護自体の身体的負担はもちろんのこと、介護が必要な家族と常に顔を合わせなければならない精神的負担も大きいため、心身ともに疲れ切ってしまう場合も少なくありません。とくに、介護の負担が原因で「介護うつ」になる介護者も増えています。

離れていれば、必要に応じて介護サービスを利用しながら別々の暮らしを続けられるため、良い意味で距離感を維持したままサポートができるでしょう。

・介護保険サービスを利用しやすくなる

介護保険サービスは、家族が同居しているよりも離れて暮らしている方が利用しやすい場合があります。同居介護を選択すると、世帯内の家族構成などにより、老人ホームや訪問介護(ヘルパー)などが規模通りに利用できないことがあるためです。

♦︎ 遠距離介護のデメリット

遠距離介護のデメリットは、次の2つが考えられます。

・緊急時の対応が難しくなる
・介護費用が大きくなる

とくに、2番目の「介護費用が大きくなる」という点は、同居介護では発生しない交通費が大きな負担となるためです。

では、ひとつずつ見ていきましょう。

・緊急時の対応が難しくなる

体調の急変やケガなどすぐに駆けつけたい緊急時の対応が難しくなります。遠ければ遠いだけ、連絡を受けてから親の住まいに到着するまで時間がかかり、家族がフォローしきれないことも生じるでしょう。

対応策としては、毎日親と連絡を取る時間を決めて安否確認をしたり、ケアマネージャーや地区の民生委員、隣近所の方など緊急時にサポートが依頼できる方たちと連絡を取っておくことをおすすめします。

・介護費用が大きくなる

遠距離介護の大きなデメリットは、介護費用がかさむことです。遠方になるほど交通費がかかるため、家計を圧迫する恐れがあります。また、介護の必要度に合わせて親の住まいを整備することも必要です。手すりやスロープなど住宅改修をしたり、デイサービスや訪問介護の介護サービス費や、介護ベッドなどのレンタル費用も同居介護より増える場合があります。

なお、介護保険サービスを利用して費用負担を軽減するためにも、自治体に要介護認定を申請して要支援または要介護の介護保険証の交付を受けましょう。要介護認定を受けると、介護のための住宅改修費用も介護保険で20万円まで利用できるため、担当のケアマネージャーに相談してみてください。

まとめ

遠距離介護は、親子の住まいが離れていてもお互いの生活を尊重しながら介護ができる方法です。身体的・精神的な負担を軽減したり、介護保険サービスを利用しやすいといったメリットがあります。

一方で、交通費を中心に介護費用など経済的な負担が大きくなる点はデメリットです。

介護に正解はありません。親の意向や介護者の人生のバランスを図りながら、遠距離介護を含めてどのような介護方法が自分たちに合っているか、しっかり話し合うことが大切です。