
新型コロナウイルスの感染の広まり、そして「まん延防止等重点措置」などの度重なる延長が繰り返され、高齢者施設では、入居者とその家族らとの面会の取り扱いに手探りの状態が続いています。
現状はどうなっているのでしょうか?
最新事情を探ってみました。
オンライン面会が日常的に

新型コロナの感染拡大を受けて、老人ホームでの面会は、2020年4月以降、緊急時を除いて制限されてきました。度重なる措置の延長で、家族との面会の機会が長い間もてずにいた入居者が少なくなかったのではないでしょうか。
家族らと交流できないことが、ホーム入居者の心身の健康に影響を与えることが指摘され、厚生労働省は感染防止の徹底を呼びかけつつも、オンラインでの面会を推奨し始めました。
その結果、LINEやZoomなどを使ったオンライン面会の導入に踏み切った施設が大幅に増えました。
オンライン面会は、通常施設内の相談室や共有スペースを使って、予約制で行われます。入居者は自室からそこへ移動して、まず、スタッフがパソコンを操作し、ビデオ通話がつながっているか、映像が安定しているかなどを確認。そのうえでスタッフは退出し、30分程度のプライベートな面会が許されるのが一般的です。
「どこに話しかければいいの?」と、最初はオンライン面会に戸惑っていた入居者も、徐々に慣れてくると、「顔が見られてうれしかった。ほっとした」など、前向きな感想が多く聞かれるようです。
遠方では海外からの面会もあり、また、自身もからだの具合が悪くて来訪できなかったという家族からは、こうしたシステムが利用できてありがたいとの声が上がっています。
様々な事情で施設に来訪できない方が意外に多いことがわかり、対面での面会が可能になっても、今後もオンライン面会を随時行っていきたいとする施設もあるようです。
ワクチン接種を前提に対面での面会を再開

新型コロナのワクチン接種が進み、ワクチン接種を面会の条件にする施設も増えています。
一般的に、面会希望者がワクチン接種を2回受け、最終接種日から2週間たっている場合、また、検査での陰性が確認できた場合、施設の入居者と直接対面で会うことを認めるルールが導入されています。
これは厚生労働省が、昨年2021年11月、対面での面会の再開を検討するように施設側に求める方針を決めたからです。
背景には、ワクチンの2回目接種を終えた人が全人口の8割近くに達し、高齢者施設などでのクラスター発生件数が減少傾向にあったことが挙げられます。面会の時間や回数、人数などの実施方法は、施設がある地域の感染状況などを踏まえて、各施設の管理者に委ねられました。
厚労省の方針を受けて、「ワクチン2回接種済み」「1回家族2人まで」「時間は20分」「全員マスクを着用」などの条件を設けて、対面での面会を再開する施設が増えました。
場所はオンライン面会と同様、居住エリアから離れた相談室やファミリールームなどの共有スペースが一般的。飛沫防止用のアクリル板越しの対面に限るところ、四方を透明ビニールシートで覆ったテント内でのみというところなど、施設によって様々です。
一方で、一部の施設では、スタッフが十分な換気や消毒の徹底に配慮したうえで、入居者の個室への家族の訪問を1時間限度に認めるなど、家族とのふれあいを重視する傾向がみられました。
ところが、今年に入ってオミクロン株の感染拡大で、再び多くの都道府県に「まん延防止等重点措置」が適用され、個室訪問は制限されているようです。
看取り期の入居者に家族との対面面会を許した施設の場合

そうした中、オンライン面会を導入しつつも、「人生の最期のステージを入居者が孤独なままで迎えることだけは避けたい」と、対面の面会を続けている施設もあります。認知症や聴力の問題で意思疎通が難しく、オンラインでは限界があるからです。
一部の特別養護老人ホームや有料老人ホームは、看取り期の入居者に家族との対面面会を認めています。家族はほかの入所者と動線が重ならないように、施設内での行動が制限されます。
80歳代の入居者は、個室のベッドで家族から声をかけられながら、静かに息を引き取りました。亡くなる直前の数日、家族は毎日会うことができて、入居者は笑みを浮かべていたといいます。きちんとお別れができて、家族にとっても一つ区切りをつけることができたのではないでしょうか。
いまだ対面面会の判断に悩む施設が多数

人数や時間制限などの条件を設けて、家族が対面で触れ合う機会を模索している施設がある一方で、今後の感染状況が見通せない懸念から、対面での面会制限を継続している施設も少なくありません。
また、ワクチンを接種できない入居者もいること、家族の接種歴を尋ねるのはプライバシーにかかわることなどに配慮して、対面面会の条件に「ワクチンの2回接種」を加えることを躊躇している施設もあります。
「部屋で自由に会えるように、早く日常に戻したいけれど、もう少しの辛抱か」と、施設側は複雑な思いを抱えているに違いありません。
まとめ

いつ終息するかわからない新型コロナウイルス感染症。高齢者施設における面会の取り扱いは、それぞれに模索が続いています。
高齢者にとって、家族などとの面会は、大きな心の支えになりますし、認知症を悪化させないためにも重要です。特に、対面での面会で笑顔が戻るという方も少なくありません。ただそのためには、施設側の適切な人員配置など課題もあります。
感染対策と折り合いを付けながら、施設の状況に合った形で進めていくのがよいということでしょう。
この新型コロナの第6波が一刻も早く終息するのを祈るばかりです。