特別養護老人ホームとは

老人ホームについて  | 

特別養護老人ホームは、介護が必要な高齢者が入居する老人ホームのうち、公的な団体が運営している介護保険施設です。略して「特養」と呼ばれることも多く、リーズナブルで手厚いケアが受けられます。そのため、人気が高く入居待ちでなかなか順番が回ってこないという話も珍しくありません。

ここでは、特別養護老人ホームの特徴やポイントについてまとめてご紹介します。

特別養護老人ホームの特徴

特別養護老人ホームは、公的に運営されている介護施設です。地方自治体の外郭団体である社会福祉法人をはじめ、地方公共団体が運営しているケースもあります。行政主体の老人ホームのため、費用が安く、充実した介護サービスであるのが大きなメリットです。

特別養護老人ホームは看取りに対応しているため「終の棲家」の役割も持っています。公的施設という安心感と低価格でサービスが充実している反面、人気が集中していて、入居待機者が多いため数ヶ月から年単位で待ち続けるケースもあります。しかし、いったん入居すると看取りを受けながら最期まで入居できるというメリットは非常に大きな魅力です。

特別養護老人ホームは、3つのスタイルがあります。

「広域型特別養護老人ホーム」は、定員が30名以上で、入居希望者は全国どこの住所地からでも申し込みできます。

「地域密着型特別養護老人ホーム」は定員30名未満の小規模な老人ホームです。原則、施設の所在地の住民のみ申し込みができます。そのうち、「サテライト型」は定員30名以上の本体施設である特別養護老人ホームの連携施設です。通常の交通手段で20分以内の範囲に設置されています。「単独型」は小規模タイプで単独運営の特別養護老人ホームです。

「地域サポート型特別養護老人ホーム」は、在宅介護の利用者に見守りなどの介護サービスをおこなうタイプです。

また、特別養護老人ホームには、2つのタイプがあります。4人部屋が中心の「従来型」と10人程度で1ユニットを1単位とする「ユニット型」です。2002年にスタートしたユニット型は、少人数介護に基づいて充実した介護ケアと入居者のプライバシーに配慮したスタイルとなっています。

このほか、定員2名以上の大部屋である「多床室」や「従来型個室」も一部で残っています。

特別養護老人ホームの入居条件

特別養護老人ホームには、要介護3以上の要介護認定を受けていることが入居条件です。在宅介護では生活が困難になった65歳以上の高齢者が対象となっています。特定疾病によって介護が必要になった40〜64歳の要介護者も希望によって入居が認められる場合があります。

原則、入居条件は要介護3以上ですが、要介護1〜2の場合も特例で入居できるケースがあります。認知症や知的障害・精神障害等で日常生活に支障をきたすような症状や行動が見られる場合や、家族による虐待、身寄りがない単身世帯や家族の介護が難しい場合などです。

特別養護老人ホームの費用

特別養護老人ホームは、毎月の居住費と食費がかかります。居住費は賃貸住宅でいうと家賃に相当するものです。なお、民間の老人ホームのように入居一時金は不要です。

一般・市区町村民税課税世帯である利用者負担が第4段階の場合、2021年7月現在の費用の内訳は次の通りです。

以下、居住費(賃料)と食費などについて説明します。

・居住費(賃料)

賃貸マンションや賃貸住宅で「家賃」といわれる費用で、「基準費用額」という国の定めた金額が設定されています。部屋のタイプによって設定金額は異なります。ユニット型個室や多少室など4タイプに分かれています。

・食費

食費は1日3食分で計算されます。もし外出や外泊で食事が不要な場合は1日分での請求ですが、まとまった日数の入院や外泊のときは前もって食事を止めることもできます。食費も国が定める「基準費用額」に基づいて算定されています。

・日常生活費

日常生活で必要な理美容代や被服費、おやつ代のほか、特養で行われるレクリエーションの費用が必要です。ただし、おむつ代や通常の洗濯は特養が負担します。

費用面での大きな特徴は、入居一時金がないことです。民間施設では数十万円から1000万円単位でかかる場合もあるのと比べると、入居のハードルは極めて低くなっています。月額料金は要介護度にもよりますが、数万円から10万円台が目安。年金のみでカバーできるか、多少貯金を切り崩したり、家族からの支援を受けながら入居できるイメージです。

そのため、収入に比べて入居費用の持ち出しが大きくなるような方は、特別養護老人ホームのほかの介護施設も候補に含めるほうがベターです。

特別養護老人ホームのサービス内容

特別養護老人ホームで受けられるサービスは法律で決まっています。そのため、全国どの特養でも基本的なサービス内容は共通です。

・食事

栄養士が日々の食事の献立を作成して、入居者の身体状態に合わせて食事を管理しています。調理法や保温方法も厳格で、薬との飲み合わせや栄養バランスを考えた食事を提供します。入居者に合わせてとろみのついたおかずやきざみ食、ミキサー食などにも対応しています。

・入浴

特別養護老人ホームでは、週に2回程度の入浴が基本です。入浴時には本人の状態に合わせて介護職員が介助します。一般の浴槽を使うほか、身体の状態に合わせて機械浴なども行います。

・排泄

排泄の介助も特別養護老人ホームの大きな介護サービスのひとつです。トイレまでの歩行介助のほか、トイレでの服の下ろし着させ、排泄後の拭き取りなど、本人の介護度に合わせたきめ細かい介助を行います。

・リハビリ

特別養護老人ホームの中には、理学療法士や作業療法士による機能回復訓練を実施している施設も少なくありません。また、介護職員が日常的に介護体操や簡単な筋トレを組み合わせて入居者にリハビリをさせています。

まとめ

このように特別養護老人ホームは充実したサービスが低価格で受けられる魅力的な介護施設です。それだけに、人気が高く何年も入居待ちをしなければならないことも。早めに情報収集や申し込みをすることが、少しでも早く入居するための近道といえます。