「介護離職」は日本だけ?――北欧の事例に学ぶ、仕事と介護を自分らしく両立させる方法

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日本では今、年間約10万人もの方々が「介護離職」を選んでいます。特に真面目で責任感の強い方ほど、自分がなんとかしなければ、と一人で抱え込み、志半ばでキャリアを断念してしまうケースが少なくありません。

しかし、現役世代のご本人はもちろん、大切に想われている親御さんにとっても、介護離職は極めてリスクの高いものとなります。収入が途絶える経済的な不安に加え、社会との接点が失われることで、介護者が精神的に追い詰められてしまう現実があるためです。

一方で、福祉先進国であるスウェーデンやデンマークには、介護離職という言葉そのものが存在しないと言います。なぜ、北欧では仕事と介護の両立が当たり前となっているのでしょうか。その背景を、一緒に見ていきましょう。

介護はプロに任せる考え方が北欧の常識

北欧諸国では、高齢者のケアは家族の義務ではなく、市民としての権利であり、社会全体で支えるもの、といった考え方が浸透しています。1980年代から、住み慣れた自宅で暮らし続けるライフスタイルを重視してきましたが、家族の負担による在宅介護を目指したものではありませんでした。

介護技術を習得した専門スタッフが24時間体制で自宅を訪問し、必要な介助をすべて提供する仕組みを国の制度として整えたからです。 北欧の人々にとって、親の介護のために仕事を辞めることは、プロに任せるべき介護の仕事を、素人である家族が無理をして代わりに行った結果、家族全員が不幸になる非合理的なこと、だと捉えられます。北欧の子ども世代にとって、親のケアではなく、愛する家族として親のそばにいることが大切な役割だからです。

なぜ、日本ではこれほどまでに介護離職が後を絶たないのでしょうか。その背景には、親の面倒は子がみるべきという、古くから日本社会に根付いているという家族主義的な美徳があります。一見、温かく感じられる価値観かもしれませんが、現代のような核家族化が進んだ社会では、少ない子どもの肩に重すぎる責任を負わせてしまう原因にもなっています。

【参照】
新名正弥『フィンランド民間非営利部門の高齢者福祉分野における活動と制度』国立社会保障・人口問題研究所
狩野典子『デンマークに学ぶ高齢者福祉』国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
「介護離職」がないスウェーデン、年間10万人を超える日本 何が違う? _ ヨミドクター(読売新聞)

日本の介護休業は介護計画を考えるために使う

もちろん、今の日本で北欧とまったく同じライフスタイルを選択することは難しいかもしれません。しかし、北欧諸国の介護に対する考え方を学び、積極的に親子にとってベストな介護のあり方を模索することは可能です。

日本では、最大93日の介護休業制度があります。介護休業のイメージといえば、自分が親の面倒を見るための休みと思っている方が少なくありません。そうではなく、自分が不在な状態でも介護がうまく回る仕組みを作るための、準備期間として介護休業を捉える視点が大切です。

具体的には、親の介護について次のようなポイントによる取り組みをおすすめします。

このように、介護休業の最大93日を通して、親子共に無理のないライフスタイルを整えていきましょう。

【参照】
介護休業制度特設サイト|厚生労働省
介護休暇・介護休業制度とは|仕事と介護の両立支援で企業が注意すべきこと |人材・人事管理・総務システムのOBC

自分の人生を大切にすることが最大の親孝行

親御さんの立場になって考えてみれば、自分のせいで子どもが仕事を辞め、経済的に困ったり、暗い顔をしたりしながら、自分の介護を続けて嬉しい親はまずいないでしょう。自分ができる範囲で介護サービスを利用しながら、子供は子供の人生を送っている姿を見せることで、親は安心して介護を子どもに委ねることができます。

北欧の事例を通して、自分の生活を守ることこそが、長期戦になる介護を乗り切るための唯一の戦略であるとわかるでしょう。日本人にはなかなか発想できない、ある意味で清々しいまでの合理性が社会を貫いています。仕事を持ち続け、社会と繋がっていることで、心に余裕が生まれます。経済的にも心身的にも日々の暮らしに余裕があってはじめて、親に優しく接することが可能です。介護の必要に迫られた場合、いきなり介護離職という最終手段を選ぶのではなく、いかに国や自治体、民間の介護サービスを上手に使いこなすかに、親子一緒に楽しく暮らすヒントが隠されています。