
「孫が生まれて嬉しいけれど、毎週預かるのは正直きつい…」
「孫の面倒を見るために自分の時間がなくなって、ストレスがたまる」
こんな声を耳にすることが増えていませんか?昔なら考えられなかった「孫疲れ」によって、現代日本の家族関係に大きな変化が生まれています。
親世代にとって孫は無条件にかわいい存在のはずですが、実際には半数以上の祖父母が孫の世話にモヤモヤを感じているという調査結果も出ています。
そこでこの記事では、なぜ現代の祖父母たちが「孫疲れ」になってしまうのか、背景にある社会構造の変化に触れたうえで、三世代がバランス良く暮らせるポイントを紹介します。
なぜ今「孫疲れ」が問題になるのか

戦後、日本の家族構造は大きく変化しました。内閣府の「高齢社会白書」によると、1980年には全世帯の半分を占めていた三世代世帯は年々減少を続け、2020年時点では9.4%まで減少しました。
つまり、昔のように祖父母と孫が日常的に顔を合わせる家族関係ではなく、「たまに会う特別な存在」から「集中的に孫の相手をする責任者」へと現代の祖父母の役割が変化したことを表しています。
株式会社主婦の友社の「孫育て」をしている女性を対象とした意識調査によれば、孫育てで不満を抱くことがある女性は52%に上っています。祖父母の半数以上が何らかのストレスを感じているのが実情です。
現代の「孫疲れ」が問題となった背景には、働く家庭の増加があります。共働き世帯が当たり前となった結果、祖父母の支援を頼りにしている働く母親たちが一般的になりました。

ヨーロッパでは特に顕著で、イタリアでは毎日孫の面倒を見ていると回答した祖父母が33.1%、ギリシャでは少なくとも週に1度は見ていると回答した祖父母が48.9%に達しています。世界的に見ても祖父母への育児依存が高まっている状況を示すデータです。
ただし、現代の祖父母世代も、実は多くが現役で働いている現実を忘れてはいけません。
2023年の65歳以上の就業者数は914万人で、高齢者の就業率は25.2%。65〜69歳に限れば52%と2人に1人が働いています。
現在収入のある仕事をしている60歳以上の者については約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、70歳くらいまで又はそれ以上との回答と合計すれば、約9割が高齢期にも高い就業意欲を持っているのが現状です。
結果からわかるのは、現代の祖父母は「時間を持て余している隠居世代」ではなく、「自分の人生設計を持つ現役世代」であることです。そこに突然「孫の面倒を見てほしい」という子どもからのお願いが舞い込むという、根っこの深い問題があります。
経済負担という隠れた重圧

「孫疲れ」は体力的な問題だけではなく、経済的な負担も大きくなっています。
一例として、祖父母から孫への教育費支援は、30歳未満の受贈者1人あたり最大1,500万円までが非課税となる制度があることからも分かるように、祖父母による孫への経済支援は社会的に期待されている面があります。
ただし、そもそも日常的に孫の世話をする場合、教育費以外にも様々な出費が掛かります。
● 食事代やおやつ代
● 遊び場への入場料や交通費
● おもちゃや服などの購入費
● 急な医療費
孫に必要なこうしたお金を祖父母が負担しているケースは少なくありません。
新しい家族のカタチを目指して

三世代の課題をクリアするアプローチは複数考えられますが、「近居」もその一つです。
将来的に同居を検討しているけれど「いきなり同居は少しハードルが高いな…」という方は、お試し段階として「近居」がおすすめです。
「近居」のメリットは次の4つ挙げられます。
■ 緊急時の対応ができる
■ 日常的なストレスを避けられる
■ 互いのプライバシーを保てる
■ 段階的な関係構築が可能
「近居」以外にも、テクノロジーの活用を通して、現代ならではの解決策も選択できます。
■ ビデオ通話での日常的なコミュニケーション
■ 見守りアプリの活用
■ オンライン習い事の共有
■ デジタル家族カレンダーでの予定調整
まとめ

「孫疲れ」は、現代日本の家族が直面する新しい課題です。急速な社会変化に家族の役割期待が追いついていない構造的な問題が背景にあります。
重要なのは、三世代それぞれが無理をしない、持続可能な関係を築くことです。祖父母の善意に甘えるだけでなく、みんなが納得できる支援を通して、お互いを尊重する新しい家族のカタチを生み出す時期に来ています。
孫との時間を負担ではなく喜びとして感じられる環境づくりによって、「家族の絆」を深める試みはきっと実現します。現代の三世代家族がバランスの良いスタイルで暮らしていくためにも、古い価値観に囚われず、新しい時代にフィットした関係作りが大切です。
<参考サイト>
セゾンのくらし大研究「孫疲れ(孫ブルー)とは?モヤモヤを減らす工夫と子ども家族との上手な付き合い方」
株式会社主婦の友社「『孫育て』をしている女性の意識調査」結果 _
東京すくすく「『孫疲れ』を避けるには?専門家に聞く かわいいけど体力が…」
内閣府「令和6年版高齢社会白書(全体版)」
総務省「統計からみた我が国の高齢者−『敬老の日』にちなんで−」_ 高齢者の就業
ダイヤモンド・オンライン「祖父母と長い時間を過ごす孫に見られる『ある傾向』とは?」