世代間交流の再発見 – 欧州のコミュニティハウスに学ぶ共生のヒント

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ヨーロッパでは近年、高齢者と若者が同じ屋根の下で暮らし、お互いを支え合う「世代間交流住宅」が注目を集めています。日本でも超高齢社会の進展とともに、一人暮らしの高齢者が増加し、孤立感や介護への不安が深刻化している今、欧州の革新的な取り組みから学べることがたくさんあるのではないでしょうか?

そこでこの記事では、ドイツやオランダで実践されている世代間交流コミュニティの実例を通して、シニア世代の新しい生き方のヒントを紹介します。

欧州で広がる世代間交流住宅の魅力

最近、ヨーロッパで広がる世代間交流住宅の魅力を紹介します。

ドイツでは1990年の東西統一後、放置されていた古いレンガ造りの建物を若者たちが改修して住み始めたことが、現在のコミュニティハウス文化の起源となっています。

ハノーファーにある元盲学校を改修したコミュニティハウスでは、15世帯が暮らしており、小さな子どもを持つ家庭から年金生活者まで、文字通り老若男女が共生しています。

改修の際に省エネルギー仕様にしたことで、暖房費が従来の住居の4分の1程度まで削減されているのも特徴です。

オランダでは、住宅不足と高齢者の孤立という2つの社会課題を同時に解決する目新しいアプローチが進んでいます。アムステルダム郊外にあるヒューマニタス老人ホームでは、6人の大学生が無料で住居を提供される代わりに、月30時間を高齢者との交流に費やすプログラムが特徴です。 学生たちは食事の準備を手伝ったり、一緒にイベントを楽しんだり、単に話し相手になったりしています。この取り組みは、学生にとっては住居費の節約になり、高齢者にとっては活気ある日常と新しい刺激をもたらすWin-Winの関係を築いています。

世代間交流住宅のメリット

世代間交流住宅のメリットを高齢者、若い世代それぞれの視点で紹介します。

世代間交流住宅で暮らす高齢者にとって大きなメリットは、日常的に若い世代と接することで得られる精神的な充足感です。世代間交流は高齢者のうつ症状を軽減し、認知機能の維持にも効果が期待できます。

また、若い世代からスマートフォンやパソコンの使い方を教わったり、最新の情報を得たりすることで、時代の変化についていくことができます。知的好奇心を刺激し、学び続ける意欲を維持することにつながる特色です。

このほか、共同生活により光熱費や食費などの生活費を抑えることができ、経済的なメリットも魅力的です。

一方、若い世代にとっても世代間交流住宅は魅力的な選択肢となっています。高騰する住居費を大幅に削減できることは、学生や若い社会人にとって大きなメリットです。

また、高齢者との交流を通じて、学校では教わることのできない人生の先輩から貴重なアドバイスや知恵を学ぶことができます。実践的な生涯教育の場としても活用可能です。

日本での実現可能性

総務省のデータによると、日本では現在、約900万戸の空き家が存在し、今後さらに増加することが予想されています。これらの空き家を世代間交流住宅として活用することで、住宅問題と高齢者の孤立問題を同時に解決できる可能性があります。

すでに日本でも、NPO法人リブ&リブが運営する「世代間交流ホームシェア」など、先進的な取り組みが始まっています。実際に、家賃負担の軽減と日常的な見守り機能を兼ね備えた新しい住まい方が実践されています。

ただし、日本独自の文化や住宅事情に配慮した対応が必要です。プライバシーを重視する日本の文化に合わせて、個人の空間をしっかりと確保しながら、共有スペースでの交流を促進する設計が求められます。

成功に繋げる2つのポイント

世代間交流住宅を成功させるためのポイントを見ていきましょう。

世代間交流住宅の成功には、入居者同士の相性が極めて重要です。ヨーロッパの成功事例では、事前の面談や試験的な短期滞在を通じて、お互いの生活スタイルや価値観を確認するプロセスが設けられています。

また、共同生活を円滑に進めるためには、家事の分担や共有スペースの使い方、プライバシーの尊重など、明確なルールを設定することが大切です。

入居後も定期的なカウンセリングや相談窓口の設置など、継続的なサポート体制を整えることで、問題が生じた際の早期解決が可能になります。

まとめ

ヨーロッパで広がる世代間交流住宅は、高齢化社会の課題に対する革新的な解決策として注目を集めています。高齢者の孤立感を解消し、若い世代の住居問題を解決するだけでなく、世代を超えた相互理解と支援の文化を育む重要な役割を果たしています。

日本でも、文化的な違いに対する配慮と制度面での支援を丁寧に行えば、このような新しい住まい方が普及する可能性は十分にあります。従来の介護や支援の概念を超えて、お互いが支え合い、学び合う関係性を築くことで、より豊かで持続可能な高齢社会を実現することができるでしょう。

世代間交流住宅は、単なる住居の共有を超えて、人と人とのつながりを大切にする新しいライフスタイルの提案です。自分らしい人生の歩み方を考えるきっかけにしていただければと思います。

参考文献
ドイツのコミュニティーハウス事情(LIFULL HOME’S PRESS)
Intergenerational Housing Model(British Columbia Medical Journal)
異世代ホームシェアとは?(異世代ホームシェアリング ISEDAI)
オランダにある老人ホームでは、学生が無料で入居できる _ ハフポスト LIFE
オランダへ福祉政策の視察に行ってきました!(生活クラブ生協連合会)
総務省「令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果」