
親の介護をしていると、「通院の付き添いが大変」「仕事中の様子が心配」「急な体調変化への対応に不安」など、さまざまな悩みが出てきます。
そんなとき注目したいのが、通い・訪問・宿泊を組み合わせて利用できる小規模多機能型居宅介護です。医療ニーズにも対応できる複合型もあり、在宅介護の強い味方となります。
そこでこの記事では、小規模多機能型居宅介護の基礎知識から、家族の状況に合わせた選び方までまとめて紹介しますので、最後までご一読ください。
目次
小規模多機能型居宅介護とは?

小規模多機能型居宅介護は、「通い」「訪問」「宿泊」の3つのサービスを、必要に応じて組み合わせて利用できる在宅介護サービスです。施設に通うデイサービスを基本としながら、自宅への訪問介護や施設での宿泊にも柔軟に対応できる、とても便利なサービスといえます。
・サービスの特徴と仕組み
顔なじみのスタッフが24時間365日体制でサポートしてくれる点が最大の特徴です。同じスタッフが継続的にケアを行うため、利用者の体調や生活習慣を深く理解した上で、きめ細かなサービスを行ってくれます。
また、地域密着型のサービスのため、定員は29名以下の小規模な施設で運営されています。アットホームな雰囲気の中で、自宅のある住み慣れた地域での生活を続けられるのも魅力です。
・通い・訪問・宿泊の組み合わせ方
通常は「通い」を中心に利用しながら、体調や家族の事情に応じて「訪問」や「宿泊」を組み合わせます。
例えば、こんな使い方ができます。
1. 平日は日中施設に通い、夕方自宅へ帰る
2. 体調が優れない日は訪問介護を利用する
3. 家族の用事がある週末は施設に宿泊する
4. 急な体調変化時は訪問対応を依頼する
・利用できる人の条件と費用の目安
利用条件は以下の通りです。
1. 要支援1から要介護5までの認定を受けている方
2. 施設がある市区町村に在住の方
3. 在宅での生活を希望される方
利用料金は要介護度に応じた月額定額制で、要支援1の方で月額3,109円(1割負担)から、要介護5の方で月額27,209円(1割負担)程度です。この他に食費(1食300〜700円程度)や宿泊費(1泊2,000〜3,000円程度)の実費が発生します。
参照:小規模多機能型居宅介護とは _ 健康長寿ネット
参照:どんなサービスがあるの? – 小規模多機能型居宅介護 _ 公表されている介護サービスについて _ 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
看護小規模多機能型居宅介護(複合型)について

小規模多機能型居宅介護に訪問看護を組み合わせたサービスが「看護小規模多機能型居宅介護」(看多機)です。医療ニーズの高い方でも在宅生活を続けられるよう、介護と看護の一体的なケアが受けられます。ただし、看護小規模多機能型居宅介護は要介護の方のみ利用でき、要支援の方は対象外です。
・一般型との違い
一般の小規模多機能型居宅介護と大きく異なる点は、看護師が配置され、医療的なケアを提供していることです。「通い」「訪問」「宿泊」のサービスに加えて、看護師による「訪問看護」が利用できます。 そのため、主治医と密接に連携しながら、次のような状況にも対応可能です。
1. 退院直後の在宅生活への移行支援
2. がん末期など看取り期の在宅療養
3. 医療処置が必要な方の日常生活支援
・医療ニーズへの対応
看護師が常駐しているため、さまざまな医療的ケアに対応できます。具体的には、
1. 点滴や痰の吸引などの医療処置
2. 服薬管理や傷の手当て
3. 体調管理や急変時の対応
4. 主治医との連携による健康管理
などがあります。
・看護師による24時間サポート
医療面での不安を軽減する体制が整っているのが特徴です。
24時間365日の看護師対応で、体調の変化にすぐに気付き、対応できます。急な体調不良時も看護師が駆けつけるので、安心です。家族への医療面での相談対応や指導も行っています。
利用料金は要介護度に応じた月額定額制で、一般型より若干高めです。ただし、別途訪問看護を利用するよりも経済的な場合が多いため、医療ニーズのある方は検討する価値があるでしょう。
参照:看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)|厚生労働省
参照:看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) _ 看護職の皆さまへ _ 公益社団法人日本看護協会
参照:看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) _ 介護サービス一覧 _ かながわ介護・福祉辞典
本人の状況に合わせた選び方

小規模多機能型居宅介護を選ぶ際は、まず要介護度を確認しましょう。要支援1から利用できる一般型と、要介護1以上が対象の看護小規模多機能型があり、利用可能なサービスが異なるためです。
日常的に医療ニーズがある場合は、看護小規模多機能型がおすすめです。退院直後の支援や、痰の吸引など医療処置が必要な場合も安心して在宅生活を送れます。一方、医療ニーズが少なければ一般型で十分かもしれません。
費用面では、一般型は要介護5で月額27,209円(1割負担)、看護小規模多機能型は31,408円(1割負担)程度です。食費や宿泊費は別途必要ですが、複数のサービスを別々に利用するより経済的な場合が多いでしょう。
参照:どんなサービスがあるの? – 看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) _ 公表されている介護サービスについて _ 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
まとめ

小規模多機能型居宅介護の最大の魅力は、1つの事業所で複数のサービスを組み合わせて利用できる点です。顔なじみのスタッフによるトータルケアで、利用者も家族も安心できます。
上手な利用のコツは、まず「通い」から始めて、徐々に「訪問」や「宿泊」を組み合わせていくこと。介護する家族の働き方に合わせて柔軟にサービスを調整できるため、仕事と介護の両立をスムーズに進められます。