
介護が必要な家族を抱えると、日々の介護費用が家計に大きな負担としてのしかかります。しかし、介護保険サービスの中には、確定申告の「医療費控除」を活用すれば、負担を軽減できる場合があります。
そこでこの記事では、介護保険サービスの中で、どのサービスが医療費控除の対象となるのか、具体的なサービスをまとめてお伝えします。また、確定申告の具体的な手続きにも触れた上で、介護を受ける方とその家族が経済的なメリットを得られる方法を紹介しますので、最後までご一読ください。
目次
医療費控除とは

医療費控除は、1年間に支払った医療費が一定額を超えた場合に、確定申告を通じて所得税の軽減を受けられる制度です。医療費の一部を税金から軽減できるため、高額な医療費や介護費用による家計の負担を軽減できます。特に、治療や介護を必要とする家族がいる場合、医療費控除は大きな助けとなります。
医療費控除の3つのメリット
医療費控除には次の3つのメリットが挙げられます。
1.税金の負担を軽減できる
医療費控除を受けることで、所得税と住民税の負担を減らすことができます。
2.介護費用などの負担を軽減
介護費用は家計にとって大きな負担となりますが、その負担軽減にも医療費控除が役立ちます。
3.家族の医療費・介護費用の負担軽減にもなる
本人の医療費だけでなく、生計を一にする家族の医療費も合算して控除の対象となります。
控除額の計算方法

医療費控除の対象となる金額は、1年間に支払った医療費から、保険金などで補填された金額を差し引きます。この残額が10万円を超えた場合、その超えた分が控除対象です。
◎控除額の計算式
控除額 = (その年に支払った医療費の総額 – 保険金などで補填された金額)- 10万円(または総所得金額等の5%のいずれか低い方)
例えば、年間の医療費が50万円で、保険金などの補填が10万円あった場合: 控除額 = (50万円 – 10万円) – 10万円 = 30万円
ただし、控除額の上限は200万円です。また、総所得金額が200万円未満の方は所得の5%が差し引かれます。
この控除額が課税所得から差し引かれ、結果として納税額が少なくなるのです。
介護保険サービスが医療費控除の対象となる理由

介護保険サービスが医療費控除の対象となる理由は、介護に必要なサービスが健康管理や医療的なケアを含んでいるからです。
日本の医療制度では、介護が必要な高齢者や障がい者に対する支援を、医療と同様に重要な支出とみなしています。そのため、介護保険サービスを利用して支払った自己負担部分が医療費控除として認められる仕組みとなっています。
医療費控除の制度によって、特に介護を受ける人とその家族の経済的な負担が軽減されます。また、痰の吸引や胃ろう管理など医療的なケアを行う介護サービスには療養の目的も考えられるため、税法上も重要性を認める傾向が大きくなっています。
一方で、日常的に利用している介護保険サービスの中に、医療費控除の対象となるサービスがあることを知らない方もいるようです。
そこで、次章で具体的にどのような介護保険サービスが医療費控除対象なのか、見ていきましょう。
医療費控除の対象となる介護保険サービス

医療費控除の対象となる具体的な介護保険サービスは次の通りです。
1.対象となる主な介護保険サービス
医療費控除の対象となる主な介護保険サービスには下記のようなものがあります。
● 訪問看護
● 訪問リハビリテーション
● 通所リハビリテーション(デイケア)
● 短期入所療養介護(医療型ショートステイ)
● 居宅療養管理指導
● 介護老人保健施設でのサービス
医療行為や療養上の世話を主な目的としているため、その自己負担額が医療費控除の対象となります。
2.その他の介護関連費用で対象となる場合も
介護保険サービス以外でも、場合によって介護に関連する費用が対象となる場合があります。
・交通費(通院・通所時)
介護保険を利用して通所リハビリテーションや通院する際の交通費も、医療費控除の対象として認められています。公共交通機関の利用時には領収書が必要ですが、領収書がない場合でも、記録を残しておくことで申告が可能です。
・おむつ代(条件あり)
おむつ代は、条件を満たす場合に医療費控除の対象となります。具体的には、寝たきりの方が6ヶ月以上の医療を受けていた場合に医師が発行する「おむつ使用証明書」が必要です。この証明書に基づいて、医療費控除を申請できます。
・介護用品・器具(医師の指示がある場合)
医師の指示による介護用品や器具の購入・レンタル費用について、医療費控除の対象となる場合があります。具体的には、車いすや特殊な介護マットレスなどが該当しますので、医師の指示書を保管しておくことが大切です。
医療費控除の手続き

医療費控除の手続きのポイントと注意点を紹介します。
♦︎ 必要書類の準備
医療費の領収書や明細書を1年分集め、「医療費控除の明細書」を作成します。明細書には、医療機関等の名称、支払年月日、医療費の区分、支払金額などの記入が必要です。
おむつ代を申告する場合は「おむつ使用証明書」を用意しましょう。
♦︎ 確定申告の方法
確定申告は、e-Taxを使ったオンライン申告や、紙の申告書を作成して郵送する方法があります。
1.e-Taxを利用する場合
国税庁のホームページからe-Taxソフトをダウンロードし、必要事項を入力します。マイナンバーカードまたはID・パスワードを使用して電子申告が可能です。
2.書面で申告する場合
国税庁ホームページまたは税務署で確定申告書(医療費控除用)と医療費控除の明細書を入手し、必要事項を記入します。必要書類を添付して、最寄りの税務署に提出または郵送します。
♦︎ 申告時の注意点
医療費控除の対象期間は1月1日から12月31日までです。医療費控除の明細書は必ず提出しなければなりませんが、領収書の提出は不要です(ただし5年間の保管が必要)。なお、高額療養費制度で払い戻しを受けた金額は控除対象外です。また、生命保険や損害保険から給付された保険金は、医療費から差し引く必要があります。
まとめ

介護保険サービスの利用は、経済的な負担が大きいと感じられる方も多いかもしれません。しかし、介護保険サービスの一部は医療費控除の対象となるため、確定申告で税金の還付を受けられる可能性があります。
医療費控除の対象となるサービスや手続き方法は、複雑に感じる部分もあるかと思います。しかし、しっかりと理解し、適切な手続きを行うことで、介護費用を軽減し、より安心して介護に取り組むことが可能です。
もし、医療費控除について不安な点やわからないことがあれば、税務署や税理士などに相談してみましょう。
参照:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
参照:No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価|国税庁
参照:2 介護保険サービスの対価に係る医療費控除について|国税庁
参照:千葉市:よくあるご質問(FAQ):医療費控除の対象となる介護保険サービスを教えてください。