家族の介護負担を減らすコツ

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高齢化社会の進展に伴って、家族による介護の重要性が増しています。しかし、介護負担が大きくなると、介護者自身の健康や生活の質に深刻な影響を及ぼす恐れがあるため注意が必要です。

そこでこの記事では、最新の研究成果を踏まえながら、家族の介護負担を効果的に減らすためのコツを紹介します。介護者の方々が自身の健康を守りつつ、より良い介護を続けられる具体的な方法を紹介しますので、最後までご一読ください。

家族の介護負担の実際

家族による介護は、身体的、精神的、経済的に大きな負担を伴います。最新の調査によると、介護者の約9割が何らかの負担を感じてることがわかりました。

まず、身体的負担としては、入浴介助や移動の手伝いなど、日常的なケアによる疲労が溜まっていきます。特に、夜間のトイレ介助や体位変換などで十分な睡眠が取れないことも多く、介護者の約半数が体調を崩した経験があるとの報告があります。

精神的負担はさらに深刻で、介護者の約8割が患者の行動に困惑した経験があると回答しています。自分の時間が取れないことや、思い通りの生活ができなくなったというストレスを感じる人も多く、介護者の約7割が「気が休まらない」と感じているのが現状です。

そして、経済的な面では、介護用品の購入や介護のために仕事を調整せざるを得ないことなどから、約7割の介護者が金銭的な余裕がないと感じています。

このように、家族の介護負担は体力やストレス、お金といった複数のポイントにより深刻な問題となっており、介護者自身の健康や生活の質にも大きな影響を与えています。

参照:見えづらい介護者の負担の実態とは?疲れや負担を軽減する方法も解説 – Medilead
参照:認知症介護の実態(3)-家族介護者の介護(関連)費用の負担状況 _ニッセイ基礎研究所

介護負担を軽減するためのポイント3つ

介護負担を軽減するためには、下記の3つのポイントが重要です。

介護者自身の心身の状態を定期的に確認することが大切です。最近では、国立長寿医療研究センターが公開している「CRA-J-10」などの簡易な質問票を使って、自身の介護負担度を数値化できるようになりました。上手く活用すると、負担が重くなりすぎる前に休息を取ったり、介護の方法を工夫するといった対策ができます。また、疲労やストレスの兆候を見逃さないよう、自分の体調や感情の変化に敏感になることも重要です。

参照:Caregiver Reaction Assessment 日本語版 短縮版(CRA-J-10)_国立長寿医療研究センター
参照:家族介護者の負担感を数値化 簡略な質問票開発 うつ兆候も把握 長寿研など「支援につなげて」:東京新聞 TOKYO Web

介護に関する正しい知識や技術を身につけることで、効率的かつ安全な介護が可能になります。地域や自治体が開催する介護教室や介護の専門家による講習会に参加したり、介護の専門書や動画を活用したりして学習しましょう。例えば、正しい移乗技術を習得すれば、車椅子やベッドから高齢者を移動させる際、介護者の疲労を抑え、腰痛になる恐れを軽減できます。また、認知症の症状や対応方法を理解・習得しておくと、本人とより良いコミュニケーションが取れるようになります。

介護は長期間にわたって行うケースが多いため、介護を一人で抱え込まず、家族や親族で分担することが重要です。定期的に家族会議を開き、家族でメンバーごとの状況や介護の悩みについて話し合いましょう。役割分担を明確にし、互いにサポートし合える体制を作ることで、誰かに負担が偏るのを防ぐことができます。また、介護の悩みや不安を話し合うことで、精神的な負担も和らぎます。

介護者のセルフケア方法

介護者が自身の心身の健康維持でセルフケアを行うことは、質の高い介護を続ける上でとても大切です。

介護者の心身の回復にとって、十分な休息と睡眠は欠かせない生活習慣です。できる限り、規則正しい睡眠サイクルを維持するよう心がけましょう。日中に15分程度の昼寝をするなど、短時間でも休憩時間を取る工夫も大切です。

例えば、介護サービスを利用している間や、本人が昼寝をしている時間に会わせて休息を取りましょう。睡眠の質を向上させるために、就寝前に入浴やヨガ、瞑想などのリラックスタイムを楽しんだり、寝具や照明などを新調して寝室環境を整えたりすることも効果的です。

自分に合ったストレス解消法を見つけ、定期的に実践し介護によるストレスを軽減しましょう。具体的には、散歩や自転車などの軽い運動やヨガ、呼吸法、瞑想などのリラクゼーションがおすすめです。また、読書、音楽鑑賞、ガーデニングなど、趣味の時間を作り、自分が楽しめる活動を短時間でも行うとストレス解消につながります。友人とお茶をしたり、介護者同士の交流会に参加したりなど、人と触れ合う機会を積極的に作りましょう。

介護者自身の健康管理も長く介護を続けるために重要です。年に一度は健康診断を受け、自身の健康状態を把握しましょう。また、日々の体調変化にも注意を払い、気になる症状がある場合は早めに医療機関を受診してください。特に、持病がある場合は定期的な通院を欠かさず、症状の悪化を防ぐ意識が重要です。

このほか、自身の精神状態にも注意を払いましょう。もし、うつっぽい症状や強い不安感を感じた際には、ためらわず精神科医や心療内科医など専門の医師に相談することをおすすめします。地域の保健センターや行政の電話窓口などで、心の健康相談を利用するのも一つの方法です。

まとめ

家族にとって介護の負担は身体的、精神的、経済的側面があり、介護者の約9割が何らかの負担を感じているデータがあるほどです。

そこでこの記事では、自身の状態を客観的に把握すること、介護に関する正しい知識と技術を身につけること、介護の役割分担と家族間のコミュニケーションを大切にするといった3つのポイントをお伝えしました。

その上で、十分な休息と睡眠の確保、ストレス解消法の実践、定期的な健康チェックといった介護者のセルフケア方法を通して介護者自身の健康を守りつつ、より良い介護が続けられる工夫をしていきましょう。