
災害は特に高齢者にとって大きなリスクをもたらします。加齢による心身状態の低下により、緊急時の迅速な対応が困難な場合が多いからです。
そこでこの記事では、高齢者本人や介護をしている家族をイメージし、災害時に備えるための防災対策を紹介します。災害が頻発する今日、必要な防災グッズの準備、避難計画の立て方、緊急時の心構えまで、高齢者の安全確保について改めて考えてみませんか。
高齢者とその家族と災害

高齢者とその家族にとって災害は日常生活を一変させ、時に生命の危険にさらされるなど重大な影響を及ぼします。
特に、地震、洪水、台風などは高齢者にとってリスクが大きい災害です。例えば、地震の場合、大きな揺れに身体を支えられず転倒したり、住宅の倒壊や火事により逃げ遅れるといった重大な問題が生じます。
また、洪水や台風では心肺機能や歩行状態により避難困難なケースや、必要な医薬品が手に入らないといった可能性が高いです。
このように、突然発生する災害に巻き込まれることで高齢者は生命にかかわるリスクとなりうるケースが多く、家族や介護者は事前に入念な準備と防災計画を用意する必要があります。
参照:災害準備されていますか?―要介護高齢者の災害準備を考える―|地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
高齢者向けの基本的な防災対策

高齢者向けの基本的な防災対策には、一般的に用意するものに加えて注意が必要なポイントがあります。
まず、高齢者の健康管理にとって必要なアイテムの準備が重要です。特に、糖尿病や心疾患、高血圧など慢性疾患の持病で日常的に服用している治療薬を数日から1週間程度用意しておくと安心です。
また、安全な連絡方法の確立も重要です。特に身体機能や認知機能が低下している高齢者の場合、自分自身で避難所を目指したり、誰かに連絡するなどが難しい可能性があります。そこで、緊急連絡カードの活用がおすすめです。
高齢者の名前、住所、緊急連絡先、持病やアレルギーの情報、定期的に服用している薬のリストなどを記載しておき、高齢者本人に常時携帯させるようにします。万一災害発生時には避難所や救助隊員が情報を確認し家族や関係機関に連絡したり、その場で必要な救命処置や避難支援を行うことが可能です。

緊急連絡カードの他、自治体や保健所などで配布している「ヘルプマーク」も推奨します。ヘルプマークは、外見からは分からない障害や病気があることを周囲に知らせることができるメリットがあります。裏面には緊急連絡先や必要な支援内容などの記入欄があるので、積極的に使ってみましょう。
参照:備えて!高齢者の避難 服用薬1週間分を用意 眼鏡や杖など忘れずに 行動の手順も確認を:東京新聞 TOKYO Web
災害時の高齢者の心構えと行動

災害時の高齢者をサポートする場合、下記の点を踏まえた心構えと行動が重要です。
1.緊急事態における安全確保
高齢者と一緒に、普段から避難経路を確認しておきましょう。特に自宅から避難所までのルートを実際に移動しておくことが大切です。
また、自宅での被災を想定し、できるだけ安全な環境を整えることも重要です。例えば、地震による家具の転倒を防ぐため、重い家具は壁に固定しておく、床にガラスの破片などが散乱しても逃げ出せるように非常用持ち出し袋のそばに靴も用意しておくといった対策をおすすめします。
2.介護の視点で重要なポイント
車イスを使っている高齢者の場合、介護をしている家族は車イスによる避難経路を事前に確認しましょう。また、水や食料、救急セットなどの一般的な非常用持ち出し袋とは別で、必要な医薬品や介護用品を入れた高齢者のための避難袋を準備しておきましょう。

3.心理的サポートの重要性
災害後の避難所では高齢者の孤独感・孤立感を防ぐため、家族や介護者が積極的にコミュニケーションを取り心理的な支えとなります。高齢者はもちろん介護を続ける家族にとっても被災によるストレスは大きいものです。
災害時に派遣されるカウンセラーや看護師・介護士などに相談し、高齢者の身体的・精神的健康を維持する努力が必要です。
参照:「4. 災害時における高齢者の救済ー東日本大震災の時系列と今後の課題」|日本老年医学会雑誌
まとめ

高齢者とその家族にとって災害への準備は日頃から行うべきテーマです。特に要介護状態の高齢者がいる場合、防災計画を定期的に見直し、新しい情報や状況の変化に合わせてアップデートすることが重要です。
まずは高齢の家族と一緒に避難ルートを歩いてみたり、非常用持ち出し袋を点検するところから始めてみましょう。