
私たちのまわりには見えないところで大切な家族のため、小さな手で介護をしている「ヤングケアラー」と呼ばれる子どもたちがいます。
未成年の子どものうちから介護の役割を果たしているのは、なぜでしょうか。また、子どもたちの日常生活や心の内面にはどのような大変さが隠されているのでしょう?
そこでこの記事では、ヤングケアラーの子どもたちが直面する日々の様子や心と体の負担について紹介します。国や学校、介護業界による支援方法にも触れ、社会問題であるヤングケアラーの子どもたちの問題を一緒に見ていきましょう。
ヤングケアラーってどんな子たち?

ヤングケアラーとは、未成年でありながら家庭内での介護に関わる子どもたちのことです。学校生活を送る一方で、家では親や兄弟、祖父母のため買い物や料理、掃除、洗濯といった家事をしたり、食事や入浴、排泄などの介助をしたりしています。また、障害や病気のある親兄弟の世話や見守りなど、日々の世話を担う重要な役割を果たしながら、家計を支えるために放課後にパート・アルバイトをしたり、学校を諦めて就職したりする子どももいます。
ヤングケアラーになる未成年の子どもたちの中には幼稚園や小学生もいますが、特に中学生や高校生に多いです。家族の世話を続ける理由として、親が持病を抱えている、高齢の祖父母と同居している、兄弟が障害や病気のため特別なケアを必要とするなど、様々な家庭環境に生まれ育っています。
では、なぜヤングケアラーが増えているのでしょうか? 増加する背景には加速する高齢化社会や核家族化、地域コミュニティの希薄化などいくつかの社会的要因が関係しています。とりわけ、高齢者の割合が増えるにつれて介護を必要とする家族も増加しており、そのケアが家族に委ねられるケースが多くなっています。
また、核家族化や経済状況の変化により親世代が仕事で自宅を留守にする代わりに、子どもたちが介護の役割を担うケースが増えています。さらに、隣近所の付き合いがなく地域コミュニティの支援が得られにくくなる中で、家庭内での負担が子どもたちにも及んでいるのです。
ヤングケアラーとして暮らすことで、こども自身の成長や健康、教育にも大きな影響を及ぼします。学校生活と介護や家事との両立は簡単なことではありません。学業や友人関係が続けられなくなったり、自由な時間を持ったりするのも難しくなります。
このように、ヤングケアラーと呼ばれる子どもたちは私たちの目に見えないところで大きな責任を背負い、日々小さな体で努力しているのです。
ヤングケアラーのこどもたちの実際の様子

ヤングケアラーの一日の例を見ると、一般の子どもたちの日常とは大きく異なります。
朝、学校に行く前に家族の世話をし、学校から帰宅後も家事や介護に追われることが多いです。例えば、朝食の準備、服薬のサポート、移動の補助などヤングケアラーにとっては日常茶飯事のことですが、一般の子どもたちからすると想像もつかない責任を毎日果たしています。
また、ヤングケアラーの子どもたちはただ忙しいだけでなく心理的な重圧も伴う点が問題です。自分の時間やプライバシー、友人との時間を犠牲にして家族のために時間を割いている場合が多いからです。学校での楽しい時間や趣味を楽しむのも制約があり、自分のことよりも家族のことを優先する生活が当たり前になっています。そのため、孤独感や疎外感、ストレスを感じることも少なくありません。
ヤングケアラーの子どもたちは家族を支えることはごく当たり前の感覚を持っています。誇りを持って介護や世話をしている反面、「他の子どもたちと同じように遊びたい」「勉強がしたい」「家を離れて進学・就職をしたい」という普通の願いを持っています。
参照:ヤングケアラーの葛藤「家族か自分の人生か」迫られる選択 _ NHK
ヤングケアラーへの温かな支援方法

ヤングケアラーへの支援では、特に学校との連携が重要です。教師やスクールカウンセラーがヤングケアラーの状況を把握・理解し、学業の負担を和らげる柔軟な対応が必要な場合があります。例えば、宿題の量を調整する、授業の見直しや追試の機会を与えるなど、個々の家庭や本人の状況に合わせたサポートが効果的です。
また、カウンセリングを通した支援も欠かせません。ヤングケアラーは自分の感情や悩みを表現する機会が乏しい場合が多いため、学校内外の専門的な心理サポートによりストレスを発散させ生活の課題を解決するきっかけづくりが重要だからです。
現在、国はヤングケアラーに対し支援策に取り組んでいます。
具体的には、福祉、介護、医療、教育等の関係機関・団体間での連携を促進するためのガイドラインを作成し、ヤングケアラーの早期発見と早期支援を目指します。また、相談窓口を開設したり、家事や介護を支援する取り組みも進行中です。 ヤングケアラーの認知度向上を目指す広報活動や啓発イベントや、SNSやテレビ電話などを活用したオンライン交流イベントの開催し、ヤングケアラー同士の交流促進と支援者や専門家から直接アドバイスを受ける機会を提供しています。
参照:ヤングケアラー 国がまとめた4つの支援策って? _ NHK
まとめ

家族のために小さな手で介護を行う未成年の子どもたちであるヤングケアラーの日常は忙しく、心理的な重圧も伴います。そのため、支援には学校や専門家との連携が重要であり、国も早期把握や相談支援、家事や介護サービスの促進、啓発活動など具体的な支援策を提供しています。
ヤングケアラーが抱える問題への理解を深め、子どもたちの未来を支援する取り組みがより一段と求められます。