
「老人ホームはまとまった費用がかかりそう」
「年金や蓄えを切り崩しながら老人ホームで暮らせるだろうか」
「終の棲家」になる老人ホームの入居でどのくらい費用がかかるのか、不安な方が少なくないでしょう。老人ホームは、施設の種類や規模はもちろんのこと、要介護度や所得によってもかかるお金が変わってきます。
ここでは、老人ホームで気になる入居費用についてまとめてご紹介します。
主な老人ホームの入居費用の相場

老人ホームは運営主体や設備やサービス内容などによって、いくつかの種類があります。そのうち、介護付有料老人ホームや特別養護老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅の4つは人気も高く、利用者の多い介護施設です。
民間企業が運営する老人ホームで、手厚い介護が特徴です。ただ、施設によって入居費用は幅が大きく、入居一時金は0円〜数億円、月額料金は安くても15万円前後、設備やサービスが充実している施設では35万円前後かかります。
特養と呼ばれる公的施設で、リーズナブルな料金で手厚い介護サービスを提供しています。入居一時金はなく、月額料金の相場は本人の要介護度や所得に応じて約6万円〜約15万円で利用できます。
③住宅型有料老人ホーム
自立や要介護度の低い、比較的元気な高齢者が暮らしています。安否確認や緊急時対応のほか、食事の提供や家事代行サービスを提供する施設も。民間施設のため、入居一時金は0円から数千万円、月額料金は15万円前後から35万円前後と高めの設定となっています。
④サービス付き高齢者住宅
賃貸マンションのシニア向けといったスタイルで、安否確認と生活相談サービスを提供している民間の賃貸物件です。介護が必要な場合は外部の介護事業者と契約して利用します。入居一時金は敷金として居住費の2〜4ヶ月分が相場。月額料金は10万円から30万円程度です。
民間と公的施設では費用相場が大きく異なる

なお、入居一時金は公的施設の特別養護老人ホームでは不要です。一方で、介護付有料老人ホームや住宅型有料老人ホームなどの民間施設では、入居一時金を0円や安く設定して入居しやすい代わりに、月額費用を高めに設定している場合もあります。
また、特養の月額料金は、国の基準で定められています。要介護度と所得状況によって区分されていて、要介護度が低く低所得者は約6万円〜、要介護度が高く一定の所得がある方は15万円程度です。民間施設の月額料金のポイントは、立地や施設の規模や設備、介護・看護体制の充実度などが積み重なると、まとまった料金になるところが目立ちます。
老人ホームの費用の内訳

老人ホームの費用には大きく分けて、入居一時金と月額費用があります。ここからは、入居時のみ必要な入居一時金と、毎月の介護サービス費と家賃や食費などを含む月額費用の内訳を見ていきましょう。
▼入居一時金
介護付有料老人ホームなど利用権方式の介護施設の多くで採用されています。入居金や初期費用と呼ばれることもあって、賃貸物件でいう礼金・敷金に相当する金額です。
したがって、入居一時金は数ヶ月から数年程度の家賃を前払いで支払い、敷金として預けておくといった意味合いを持ちます。ただ、施設によっては入居時にまとまった費用がかからないように0円〜低料金で入居一時金を設定して、入居のハードルを下げているケースも増えてきました。ただし、入居一時金で前払い家賃が確保できない分、月額料金を割高にしているケースが少なくありません。
一般的に、老人ホームを退去する際、入居一時金は定めにしたがって返還されます。ただし、入居一時金を全額または入居年数に応じて返還される場合と、残額を月単位または年単位で均等に償却する初期償却される場合と2種類があります。
介護付有料老人ホームのうち大手グループの中には、初期償却の制度を設けている場合があります。初期償却とは、入居一時金で支払った金額のうち一部を施設が収納。退去時に返金されない仕組みです。非返還金対象額とも呼ばれていて、入居一時金の総額に対して1割〜3割が相場です。

もし何らかの事情で入居中の老人ホームを移りたいと思ったとき、初期償却のある施設ではまとまった金額が返金されない可能性もあります。また、返還金制度は施設によって償却方法が異なりますので、契約時に確認しておきましょう。
▼月額費用
主な月額費用には、介護保険が適用される介護サービス費、賃貸住宅の家賃に相当する居住費、食費のほか、その他費用(水道光熱費や管理費、レクリエーション費、日用品や医療費)などがあります。
・介護サービス費
入浴介助や食事介助、排泄介助など受けた介護サービスに応じて、介護保険の自己負担額を支払います。自己負担割合は所得によって1割〜3割です。
・居住費
家賃として居室の面積や設備によって料金設定が異なります。広さとキッチンの有無で割高になる場合が多く見られます。
・食費
毎日の食事にかかる費用です。施設で調理せず外部の給食業者に委託している場合もあります。
・その他費用
水道光熱費やメンテンナンスや事務費用のほか、施設で企画開催するレクリエーションやサークル活動費、理美容費などです。さらに、日用品費や医療費も必要です。
老人ホームの種類で費用相場が違うわけ

老人ホームのうち、特別養護老人ホームなどの公的施設は低価格で国が定めた基準で手厚い介護サービスが受けられます。一方で、介護付有料老人ホームのように民間施設の場合は、立地や居室の広さ、共有スペースや設備の充実度によって金額に大きな開きがあります。
たとえば、富裕層向けの住宅型老人ホームの中には、コンシェルジュが常駐していたり、季節のイベント開催も多く、施設内に豪華なシアタールームやスポーツジム、プールや温泉などを備えたところもあります。こうした設備やサービスが充実している分、入居一時金や月額費用が高く設定されているのは、ごく自然なことです。
また、介護職員や看護師の配置体制が充実していて、介護サービスや医療的ケアを不安なく受けられる、生活支援サービスが充実していて生活やすいなど、余裕のある暮らしを送れる分、料金に反映されているケースが多いのです。
まとめ
老人ホームは、施設の種類や運営方針などによって費用相場もさまざまです。設備の充実度や受けられるサービス内容にも違いが生まれるので、実際に老人ホームを見学したり、口コミなど情報収集をしたり、慎重に検討していってください。