
食事は日々の生活にとって大きな楽しみのひとつです。
老人ホームは栄養管理も大切な役割を担っているため、栄養バランスを考えて作成したメニューを提供しています。
ただ、それまで自宅で自由に食べていた方が、いきなり老人ホームで施設の提供する食事を食べ始めると慣れるまで時間がかかることも。
栄養バランスだけではなく、刻み食やとろみをつけた調理など、高齢者の状態に合わせて対応してくれるかどうかも大切です。
ここでは、老人ホームの食事の特徴とチェックポイントについてご紹介します。
老人ホームの入居で大切な食事

食事は一日三回、毎日続きます。高齢者になるとアクティブに動きづらくなったり、人との交流も現役時代に比べると狭まってきたりするので、日々の楽しみやストレス解消に食事が大きな役割を果たすようになります。
それまで自宅で食べたいものを好きなときに取っていた状態から、食事時間や食事内容が決められてしまうので、老人ホームに入居してしばらくは食事に慣れるのに時間がかかったという声もしばしば耳にするほどです。
入居して楽しく過ごそうと思っていたのに、老人ホームの食事が合わなかった、というのでは、生活の質そのものが低下してしまいます。

とくに、年齢が上がるにつれて物を噛んだり、飲みこんだりするのに問題が生じる高齢者が増えてきます。
こうした咀嚼能力や嚥下能力の変化に合わせた食事を提供してくれる老人ホームかどうかが大切な施設選びのポイントです。
また、糖尿病や腎臓病などで療養食が必要な方、服用している薬の関係で控えなければならない食材がある方もいます。毎日の楽しみであるとともに、健康を支えるのに欠かせない食事の視点から老人ホーム選びを考えてみましょう。
最近の老人ホームの食事はバラエティ豊か

老人ホームの食事を病院食と同じイメージで捉える方がいますが、そんなことはありません。
最近の老人ホームでは、生活の質を向上するため食事を大切なアイテムのひとつと考えていて、飽きない献立や豊富な食材で食事を提供している施設が増えています。
以下は、毎日の食事メニューと、お正月や七夕、節分などの四季の行事に合わせて出されるイベント食のメニュー例です。
・毎日の食事メニュー例
【朝食】
[洋風]パン、スクランブルエッグ、ヨーグルト、フルーツ、牛乳
[和風]ごはん、みそ汁、焼き魚、おひたし、漬け物
【昼食】
ごはん、酢豚、ナムル、中華風スープ、フルーツ
【夕食】
ごはん、すまし汁、焼き魚、和え物、漬け物
・イベント食のメニュー例
1月 おせち料理、雑煮、ぜんざい
2月 恵方巻き、豆菓子
3月 ひな祭りのちらし寿司
4月 花見弁当
8月 そうめん
10月 紅葉シーズンの行楽弁当
12月 クリスマスのチキンやケーキ
身体状態に合わせた食事対応

加齢とともに、噛む力(咀嚼能力)や飲み込み力(嚥下能力)が低下していきます。歯の状態やあごの筋力によって、うまく食べられるなるのです。そのため、食材の固さや柔らかさ、大きさなどを調整して食事を提供する必要があります。
・軟菜食
食材で硬いものや繊維の多いものを避けた食事です。噛む力が低下している、義歯でうまく咀嚼できない方に合わせて調理しています。
・ソフト食
舌で簡単につぶせる硬さまで柔らかくした食事です。飲み込みやすいので、咀嚼できない、うまく飲みこめない方に適しています。
・ミキサー食
食材にとろみ剤を合わせてミキサーにかけて液状にしたものです。スムーズに食べられるので、粗食や嚥下能力が低下している方が食べやすくなります。
・とろみ食
葛粉や片栗粉でとろみをつけて、スムーズに飲み込めるように調理します。
・水分補給食
水やお茶のままでは水分摂取が不足する方向けです。スポーツドリンクやジュース、お茶などをゼリーにして食べます。
老人ホームでは、入居者の病気に合わせた治療食にも対応しています。
・減塩食
高血圧や腎臓病など塩分制限を受けている方の食事です。
・糖尿病食
糖分や塩分を少なくして症状が悪化しないように調理しています。
・腎臓病食
塩分やタンパク質の量を控えて、腎臓に負担の掛からないメニューを提供します。
・アレルギー食
アレルギーのある食品を避けたり、代わりの食材を使ったりして、アレルギー反応が出ないように注意します。
食事の観点から見た老人ホーム見学

老人ホームを見学するときには、昼食や夕食の時間に合わせて訪れるといいでしょう。日頃、入居者が実際にどのような食事をしているかを観察できます。
また、老人ホームによっては食事を含めた見学会を行っている場合があります。入居後の食生活をイメージするためにも、参加がおすすめです。
老人ホームの施設内で調理をしているケース、外部の給食業者に委託しているケースがあります。メニューや味に影響するので、どこが調理しているのかも大切なチェックポイントです。

このほか、食堂の雰囲気や食器やテーブルクロスの清潔度、食事中の職員の対応なども見学中に確認しておきましょう。
丁寧に食事介助をしているか、時間は十分に確保されているか、急かして食べさせていないかなど、職員の対応の様子は、入居後、気持ちよく食事を取るために知っておきたい点といえます。
食事の時間に見学できないときは、月間の献立表を見せてもらいましょう。栄養バランスや季節感に配慮されているかを確認します。
まとめ
食事は日々の楽しみに直結する大切なもの。運営側が用意する食事を見れば、介護にも丁寧な姿勢で臨んでいる様子がうかがえます。
また、食事は健康を保つ大きな役割も担っています。おいしくて栄養バランスの取れた食事を提供しているか、こうした視点から老人ホームを検討してみてください。